1週間で歩き、1カ月ほどで稽古を再開
岡本はその後、眠りについた。目を覚ましたときにはすでに病室だった。後輩の中山の顔が見える。
「おう、中山、生きていたようだ」
「押忍、先輩、わかりますか」
「空手は難しいかもしれないな」
「そうですか。医者はとりあえず、血行をよくしろと言っています」
手術から1週間ほどすると、岡本は歩けるようになった。それを見ていたハッダードが言った。
「これなら再起できるかもしれない」
岡本は病院内を歩き回った。階段を何度も上り下りする。しばらくして退院すると、すぐに道場での指導も再開した。首にコルセットを着けながら岡本は、「屈伸蹴り200回」「前蹴り200回」と声を張り上げた。岡本は懐かしそうにこう語る。
「医者は半年くらいは大人しくしているようにと言ったんですが、1カ月ちょっとで稽古を再開しました。その姿勢に生徒が驚くわけです。私が空手をいかに大切にしているかが伝わったんです」
折田がその後、大使館と交渉してくれた結果、岡本の手術費用は保険でまかなわれることになった。