日本人は体のどこが具合が悪く、どんな病気に罹り、いかに死ぬのか
新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるうなかで感染症の恐ろしさに気づかされた人も多いだろうと思う。また、病気とのつきあい方について、あらためて、考えをめぐらせる機会も増えたのではないだろうか。そこで、今回はどんな病気に日本人は悩まされているか(悩まされてきたか)についての統計データを概観してみよう。
日本人がどんな病気に悩まされているかを示す官庁統計には3種類ある(※)。
① どんな病気で亡くなるかを示す「人口動態統計」の死因データ
② どんな病気に罹っているかを示す「患者調査」の患者数(入通院者数)データ
③ どんな症状で悩んでいるかを示す「国民生活基礎調査」の有訴者数データ
※原データは、それぞれ、①死亡届とともに自治体に提出される死亡診断書、②病院がつかんでいる入通院している患者数データ、③個々人が回答した調査票、という違いがあるが、いずれも厚生労働省の統計調査である(図表1参照)。
「苦しい、痛い、怖い……」みんな病苦に悩んでいる
各データの病気トップ3は以下の順である。
① 【死因】「がん」「心疾患」「脳血管疾患」
死因のトップは「がん」(悪性新生物)であり、日本人の間でこれが最も恐ろしい病気と考えられるに至っているのも、このためである。戦前の死因トップが、新型コロナのような感染症だったことを含め、次項で、死因別の病気の推移について、もう少し詳しく見てみることにする。
② 【患者数】「高血圧」「歯周病」「糖尿病」
何の病気に罹っている人が多いかについては、罹っていても医者に診てもらわない人の数までは含まれていないが、病院に入通院している患者数から把握されている。患者数トップは「高血圧」である。血圧は高齢になるとほぼ決まって高くなる傾向を有し、高血圧症の血圧基準は年齢によって変化しないので、高齢者の多くが高血圧で病院に通う結果となる。こうしたことから高齢者が多くなった日本で「高血圧」が患者トップとなっている。
患者数2位の病気は、やや意外なことに「歯周病」である。この点を含めて、後段で、患者数のランキングと最近の変化についてふれることにする。
③ 【有訴者数】「腰痛」「肩こり」「手足の関節の痛み」
有訴者は、具合の悪いところはないかを広く国民から聞いた結果の数字であり、「腰痛」が1位となっている。
「腰痛」は、4足動物から2足動物への進化した人間にとって、まだ不適応なところとして宿命的に残存している体の不調と考えられている。この点を含めて、本連載で、以前、有訴者率の推移から、加齢に伴う「物忘れ」や「耳が遠くなる」などの症状が、最近の高齢者では減ってきている「若返り」状況を分析したので参照されたい(昨年11月「日本の高齢者は20年前より10歳は若返っている」)。