不倫はある意味「いいとこ取り」の関係

自分が独身にしろ既婚にしろ、既婚者とばかりつきあってしまう人は少なくない。そういう人はたとえ痛い目に遭ってもまた不倫を繰り返す。どうしてそうなってしまうのだろうか。

【福島哲夫氏】恋愛は先ほど言ったように、錯覚から始まることが多いんです。自分の理想の恋人、理想の恋を相手に勝手に投影した経験をもつ方は少なくないのではないでしょうか。若いときにはよくあることです。そしてそこから脱していって、自分と合う人を見つけるわけです。

でもこれが不倫の場合、相手を独占できなかったり、パートナーとして次の段階に移行できないために、幻滅や脱錯覚が起こりにくくなります。ずっと一緒にいれば相手の悪いところも合わないところも発見しやすいでしょうが、不倫はずっと一緒にいるわけにはいかない。こういう言葉で言っていいかどうかわかりませんが、ある意味では「いいとこ取り」の関係でいることも可能です。だからなかなか不倫から抜け出すことができないという事態が生じるんです。

不倫を純然たる恋愛と考えれば、不倫は結婚のように、相手の人生や運命をも引き受けなくてはいけないという重い責任からは逃れられる。これも不倫を繰り返す要因です。さらには恋愛にはつきものの「ひょっとしたら選ばれないかもしれない」という厳しい選別に対しても「最終的なパートナーとしては選ばれないのが当然」という安心感からそこにどっぷり浸かる結果になります。そして「不倫とわかっていたはずの関係にはまり込んで、いつしか抜けられなくなった」という事態を招くわけです。

「感情的なやり直し」で浮気願望がなくなる

現代心理療法から考えると、不倫や夫婦不和は、過去の「アタッチメントの失敗」と考えられるといわれています。そこで近年注目されている体験型の心理療法に、このアタッチメントをセラピストとの間で再体験・再修正していくものもあります。

「アタッチメント・コクーン」と呼ばれる繭の中に、セラピストと一緒に入るかのような体験を積み重ねます。つまりは子ども時代に戻っての、感情的なやり直しです。親との関係でつらい記憶があるなら、「あなたは全然悪くない」ということを理解してもらう。一方で親のいいところも思い出してもらう。そして「あなたは当時の自分になんと言ってあげたいか」に答えてもらう。時間をかけてネガティブな自分の記憶を修正していくことで、心の痛みが減っていくんです。その結果、恋人や配偶者への不信感や、そこから来る浮気願望などがなくなることは多くの例で見られます。