毒親に育てられたケースは…
最近「毒親」とか「毒母」とかの問題が取りざたされていますよね。実際、これでは娘はつらいだろうなと思われるケースもよく見ます。
でも親に対しては、誰でも若干の嫌な思い出はもっているものです。それは子どもの望むような愛し方ではなかったり、見当違いの感情的怒りだったりしますが、親は結構忘れていることが多い。誰もが適度にひどい目に遭いながら大きくなるということです。
ただ、今はそういった「誰もが通ってきた親子の関係」とは質が違うんです。私の知るケースでは、20歳を過ぎた娘が母とケンカになり、娘がどんなに泣いて謝っても許してくれない、と訴えてきたことがありました。「何をしても許さない」と母が激怒し続けるんです。こうなると単なる母娘ゲンカという枠を超えています。小さなころから娘の気持ちをまったく考えずに、すべて母親が決めてしまい、それが大人になっても続く例もあります。これも単なる過干渉を超えています。
毒親育ちの女性は恋愛相手の男性に母性を求める
子どものことを話し合う懇談会で会った母親は、50歳前後で分別がありそうに見えましたが、彼女は会うなり20分くらいひとりでしゃべり続けました。彼女の子どもに関する私の話などまったく聞かないわけです。こういう親では、子どもは本当に苦労すると思います。小さいときからずっとそういう親と一緒にいたら、子どもの精神状態は不安定になりますよ。
こういう親に育てられた女性は、恋愛相手の男性に母親のように抱きしめられることを望みます。男性に母性を求めるんですね。だけど相手は男なので、母性がないわけではないにせよ、「母親のように」ケアしてくれるところまではいかない。だから満たされずに苦しんでしまう。そういう人がたくさんいます。
完璧な健康がないように、完璧な生育歴もない。何が「普通」なのかわからないが、恋愛においてことごとくうまくいかない場合は、一度、自身と親との関係や育ってきた環境を考えてみてもいいのではないだろうか。完璧なやり直しはできないが、追体験はできるし、そこで歪んだ記憶を修正したり、つらかった記憶と少し距離を置いたりすることならできるかもしれない。