3:副業・兼業を受け入れる地方の中小企業

副業・兼業の受け入れ人材を求めているのは、地方自治体だけではなく、地方の中小企業も同様です。スキルシフト(東京都港区)では、副業・兼業の受け入れを行う(契約形態は業務委託契約)、地方の中小企業と都市部の人材をマッチングするサービスを提供しています。

同社では、ホームページ上で、副業・兼業の募集を出しており、その中には仕事内容や報酬(月額謝礼)などが記載されており、希望する人材が登録をすれば、直接応募ができるようになっています。報酬や出身地で仕事を検索することもできます。(*注)

中小企業が募集している副業・兼業の仕事は、「人事・組織開発」「経理・財務」「情報システム」といった管理部門の仕事も含めて「企画系」の職種が幅広くなっています。特に、「経営計画」「新規事業企画」「商品開発」といった専門性のある人材を募集する企業は相対的に多くなっています。たとえば、下記のような案件が紹介されています(実際には企業名も明記されている。募集完了案件含む)。

豚肉食材の事業計画のブレーン、月額謝礼「5万円」

▼募集事例1

会社所在地「熊本県」、求めるスキル「経営企画」、業種「サービス業」、期待すること「熊本県菊池市で放牧飼育されている豚肉を食材とした事業計画のブレーンとなっていただける方」、月額謝礼「5万円」

ローズマリーと生の豚肉
写真=iStock.com/kolesnikovserg
※写真はイメージです
▼募集事例2

会社所在地「埼玉県」、求めるスキル「広報・PR」、業種「IT・インターネット」、期待すること「コロナ渦中の地元企業を活性化するため、マーケティングによる広報やPR活動が得意な方」、月額謝礼「3万円」

副業兼業の人材に求めるスキルとしては、定型化されたことを行う労働力というよりは、むしろ、既存の従業員では思いつかないようなアイデアの創出など、新たな価値を提供してくれる人材へのニーズが高いといえます。

スキルシフトの親会社であるみらいワークス(東京都港区)の岡本祥治社長は、副業・兼業を行う人に対して次のように助言します。

「従業員として業務をこなしているのではなくて、一つ一つの業務にお金が発生している以上、仕事の効率に対する感覚を変えなければいけません。副業・兼業で報酬を得る以上、仕事に対するプロフェッショナルな意識を持ち、また自ら学ぼうというスタンスも非常に大切です」

副業・兼業に取り組む上では、日頃から、自分のスキルを磨いておくことだけではなく、仕事に対する意識や心構えを変えていくことの大切さを感じます。

加えて、岡本社長は、同社のマッチングの特性からこう話します。

「スキルシフトは、(副業・兼業希望の)個人が応募し、その応募内容を見た企業側が複数の人材候補から採用する仕組みです。スキル以外に自分なりのストーリー(出生や幼少期を過ごしたという地域性、子どもの頃の夢など)を持ってエントリーしてくる人も多く、多様なマッチングが生まれています」

副業・兼業の効果というと、一般的には本業への相乗効果や意欲の向上などがさまざまな調査結果から指摘されています。しかし、副業・兼業をやる本当の意義は、自分にとって仕事の意味や人生における仕事の位置づけを考えることにあるのかもしれません。