アプリより、顔写真を公開すること自体が危険を招く

フェイスアップが「危ない」といわれるのは、加工するために無断で写真をアップロードしているとみられるからだ。

2019年、情報流出を懸念した米チャック・シューマー上院議員は、FBIとFTC(米連邦取引委員会)に対してアプリのデータ処理方法を精査するように依頼。これに対してロシアにある運営会社は、利用者のデータはロシアに送られたり第三者に提供されたりしておらず、ほとんどのデータは48時間以内に削除されていると主張した。

加工写真データの取扱いの他、規約の条文が肖像権などの権利を多く求めすぎていると批判を浴びたり、人種を変えられる機能が「人種差別につながる」という非難を招いたこともある。その上、お試しの3日間以内に解約しなければ、年額3200円が自動的に課金されることにも批判された。

このような理由で、「フェイスアップ危険説」は広まった。しかし、少なくとも運営会社はデータは本国や第三者には送信していないと主張しており、規約も改定されているので、現在はそこまで危険というわけではなさそうだ。

ソーシャルネットワーキングサービスの概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

ただ、このアプリには、顔写真をアップロードするという根本的な問題がある。顔写真は重要な個人情報だ。安易にアップロードしていいものではない。第三者に悪用されれば、大きなリスクがあるものだ。

「顔が出ていた方がいいねが増える」と投稿

【リスク① 顔写真がいじめの原因になる】

「SNSに顔写真を投稿すると危険」ということを知らない人はほとんどいないだろう。しかし、実際には「みんなやっているから」と投稿してしまう子どもたちが後を絶たない。それだけでなく、他人の顔写真を勝手に公開し、トラブルになることもある。

ある女子中学生は、友達に写真を載せられて困っている、と教えてくれた。

「スマホ安全教室で『顔写真は個人情報。取り扱いには注意を』と聞いたのに、みんな友達の写真も断りなしにSNSに載せてしまう。顔写真は正直あまり載せないほうがいいと思う。でも浮きたくないから、みんなで写真を撮る時には撮影する役になったり、映るときもなるべく顔が隠れるようにしたりしている」

高校生の娘を持つ母親は「娘は『制服姿の方がかわいいし、顔を出していた方がフォロワーとかいいねが増える』といって制服姿の自撮り写真を公開している。『知らないおじさんからナンパメッセージもらった』と笑ってたけど、子どもが誘拐される事件も起きているし、心配」と語る。10代を狙ってパパ活や家出などの誘いのメッセージを送る大人もいるのだ。