SNS上での誹謗中傷が社会問題になっている。ITジャーナリストの高橋暁子氏は「匿名性が人の攻撃性を高めるだけでなく、有名人だから誹謗中傷も許されるという誤った認識が問題の背景にある」という——。
サイバー空間におけるいじめの概念
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後を絶たないSNS上の誹謗中傷

恋愛リアリティー番組「テラスハウス2019-2020」(Netflixおよびフジテレビ系)に出演中だったプロレスラーの木村花さん(22)が亡くなった。木村さんは番組出演を契機にしたSNS上の中傷に悩んでいたと指摘されていた。報道によれば、多い日で一日100件もの誹謗ひぼう中傷があったという。

フジテレビは5月27日、番組の打ち切りを発表した。しかし、SNSでの誹謗中傷という問題は残されたままだ。木村さんに限らず、SNSでは個人を標的とした誹謗中傷が後を絶たない。残念ながら、とりわけ著名人が誹謗中傷のターゲットとされることは多い。

この事件で著名人たちも声を上げた。例えば、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんは「誹謗中傷を気にするななんて難しいよ。芸能人だって1人の人間だよ忘れないで」とツイッターに投稿。同じく誹謗中傷を受けたことがある多くの著名人が反応した。

SNSに日常的に触れている若者世代は、この事件についてどのように感じているのか。ひとごとではない誹謗中傷の実態とリスクについて解説したい。

「アンチがいるのは注目の証し」「気にしなければよかったのに」

歌手やタレントといった著名人への誹謗中傷は「有名税だから仕方ない」という人がいる。注目されるほど仕事にいい影響があるのだから、ファンや芸能記者に追いかけまわされたり、恋愛や不祥事が報じられてプライバシーが制約されたりしても、それは税金と同じで納める義務があるということらしい。

こうした「有名税」という考え方は大きな間違いだ。SNS上であっても相手の尊厳を傷つけていいはずがない。

この事件について、若者世代はどのように感じているのか。今回の事件について取材をしていたところ、驚くような言葉を聞いた。「ほとんどのシリーズを見ていて同番組のファン」という大学生の話だ。

「亡くなったのはかわいそうだけど、アンチがいるのは注目されている証しと考えてほしかった。ネットの言葉なんて無視すべきだと思う」