彼の認識では、テレビに出る仕事をしていたら、ネットでたたかれるのは有名税の一部だから仕方ない、というわけだ。

「正直、なぜ番組が責められて中止になるのかわからない。続きが気になってるのに見られないなんて残念すぎる。地上波は無理でも、ネトフリ(Netflix)で配信できないんですかね」

別の女子大生にも話を聞いた。

「知らない人にきついこと書くのはよくあることですよね。ネットの書き込みは気にしすぎるとキリがないと思う。若いし、かわいそうだったけど、気にしなかったらよかったのにとは思いました」

彼女自身も、中学生の頃に悪口をTwitterに書き込まれたことはあるそうだ。見つけたときは落ち込んだけど、気にしないふりして無視していたら、ターゲットが変わり、それ以上書き込まれなかった。

「みんな一度くらい書かれたことあると思う。きついけど、気にしないことで乗り切れる」

匿名で牙を向ける若者たちの存在

匿名では、攻撃性が高くなることが知られている。鬱憤うっぷんを晴らすために代替行為として他人の誹謗中傷を繰り返すことも多く、正義感で少しでも悪いところがある相手を容赦なく攻撃することもある。他の人が書き込んでいれば、さらにその傾向は強くなり、行動に拍車がかかってしまう。

SNS上での誹謗中傷は、若者、特に未成年が投稿している例も少なくない。俳優・演出家の土屋シオンさんが今年に入ってから誹謗中傷がひどかった数人を特定したところ、ほとんどが未成年だったという。

土屋さんは、彼らの今後の人生も考えて、訴えるのではなく電話で保護者も交えて話をした。ところが、そのうち数名には「芸能人は皆(誹謗中傷されても)我慢している。無視をしてくれ。イメージが悪くなりますよ」などと言われてしまったそうだ。

未成年の誹謗中傷による事件は、過去にも何度も起きている。2017年には、滋賀県内の高校3年男子生徒(18)をSNS内で誹謗中傷したとして、東京都内の無職少年(19)が名誉毀損きそんで逮捕されている。「さまざまな女ユーザーに迷惑行為を行い、最終的にはそんなことをやっていないと逃げ惑っている」などと書き込まれ、警察署に相談した後、男子生徒は自殺していた。

未成年による匿名での荒らし行為もある。ある中学3年は、ニコニコ生放送で荒らしコメントを100以上書き込んだ。その一週間後くらいに、プロバイダから通知が来たそうだ。そこには、覚えがあるコメントと書き込んだ日時、運営会社から訴えがあった旨、明記されていた。

「連絡が来たときには慌てた。親バレして切れられたし、さすがにまずいと思って会社(運営会社のドワンゴ)に謝った」。その配信に荒らしコメントをした理由は、「配信者の困っているリアクションが面白かったから」という。それくらいの理由で簡単に誹謗中傷したり、荒らし行為をする若者もいるのだ。