(7)日光浴 ビタミンD補給でインフル発症率50%減

「感染を防ぐ」というより、「免疫力を高める」観点から最重要ポイントが日光浴。もともと日光はシミの原因や、皮膚がんの発症に関与するとして嫌われてきたが、極端に日光を遮る現代生活では体内の「ビタミンD」が不足する可能性がある。ビタミンCなど、ほかのビタミンは体内で作れず食事から摂取する必要があるが、ビタミンDだけは日光浴によって唯一自分の体内で作れるホルモンの一種であるためだ。

近年、ビタミンDは「万病に効果アリ」と、みられるようになってきた。

米国医師会雑誌『JAMA』に17年、ビタミンDを補給しているとインフルエンザの発症率が50%減少したという研究をはじめ、ビタミンDのサプリメント(サプリ)を取り始めて14日後から30日までの間はインフルエンザの発症を抑えられるなど、インフルエンザには有効という研究が多数報告されている。国際共同研究で1万人以上を対象に、ビタミンDのサプリとプラセボ(偽薬)を試した結果、サプリを飲むと気管支炎や肺炎などの発症を20%抑えることもわかっている。

また“肺の健康”を保つのにも重要だ。18年、世界最高峰の栄養研究者が集う学術誌『ジャーナル・オブ・ニュートリション』で「血中のビタミンD濃度が低いと間質性肺疾患を発症するリスクが高まる」と発表された。喘息やたばこ病などの呼吸器疾患の発症や進行の予防にも有効とされる。

さらに血中のビタミンD濃度が高いほど、全死亡率も減少することがわかっている。英国医師会雑誌『BMJ』で14年、「血中のビタミンD濃度が10ナノグラム/ミリリットル低下すると、死亡率が16%上昇する」と発表された。

残念ながら新型コロナウイルスについてはいくつか最新論文が報告されているものの、有効といえるだけの根拠は不十分。しかし感染症から身を守るためには十分なビタミンDの血中濃度を維持する必要があるといえるだろう。

元北里大学教授で日本細菌学会名誉会員の熊沢義雄氏によると「大半の日本人は不十分か欠乏状態」という。

「日本内分泌学会などが17年に発表した新しいガイドラインでは30ナノグラム/ミリリットル以上の血中濃度が推奨されています。20~29ナノグラム/ミリリットルだと不十分、19ナノグラム/ミリリットル以下が欠乏といわれる。しかし厚生労働省の日本人食事摂取基準によれば、成人が一日に食事から摂取すべきビタミンDの目安量(一日5.5マイクログラム)。これでは推奨濃度に全く届きません。長野県の閉経後の女性を対象にした研究では、ほぼ半分の人がビタミンDの血中濃度が20ナノグラム/ミリリットル未満でした」

ビタミンDが豊富な食品は何か。ビタミンDにはD2とD3があり、植物由来のD2はきのこ、しいたけなどに、動物由来のD3は鮭やクロマグロなどに多く含まれ、体内で実際に働くのはD3といわれる。前出のBMJの論文でも、ビタミンD2のサプリだけでは死亡率が低下しないと報告されている。

とはいってもガイドラインの血中濃度を食事のみで維持するのは難しい。海外ではサプリから摂取することが常識といえるが、国内で販売されるサプリはビタミンD含有量が少なく、D2、D3の表記がされていないものも多い。

やはり日光浴を心がけよう。

「しっかり日光を浴びれば、一日で75マイクログラムものビタミンDを作れるといわれています。日光浴のみで推奨濃度の9割に達するという説もある」と熊沢氏も言う。この時期はせめて手や腕には日焼け止めを塗らず、一日に20分は日の光を浴びたい。