(4)歯磨き 口腔内の清潔保ちインフル発症率90%減

うがいも口腔内を清潔に保つことにつながるが、最も重要であるのは歯磨き。デイケア施設に通う高齢者190人を専門家が口腔ケアをする群と、セルフケア群に分けて追跡したところ、6カ月後に専門家がケアしていた群はインフルエンザの発症率がほぼ10分の1に抑えられていた(図3)。風邪の発症頻度も明らかに低い。プロが磨くと発症率が激減、すなわち口腔内の清潔が感染症予防に有効ということだ。

口腔ケアでインフルエンザの発症率が減る

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏は「口腔内環境が悪い人は、免疫物質IgAが少ない」と話す。

「IgAとは侵入してきた病原体にくっついて無力化するように働く免疫物質です。健康な人116人を年代別に4群に分けて、唾液と血清中のIgAを測定した研究があります。すると、1分間当たりに分泌された唾液中のIgAは加齢とともに低下することがわかりました。年を取るほど歯磨きを丁寧に行うことが大切でしょう」

特に就寝中に唾液に潜む菌が気管支に入り込むと、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まる。夜はしっかりと。

(5)睡眠 5時間以下だと風邪発症4.5倍に

続いて、唾液中のIgAと睡眠時間の関係をみた研究では「睡眠が6時間以下で短いほど唾液中のIgAの分泌量が低下していた」と望月氏。

「免疫細胞の司令塔であるT細胞が病原体などの情報を記憶し、次に体内に侵入したときに備えるためにも睡眠が必要という報告もあります」

実際に睡眠時間の短さで発症率が上昇する研究もある。

睡眠の質が低いほど風邪をひきやすい

カリフォルニア大学で健康な約160人を対象にライノウイルスが入った点鼻薬を施し、睡眠時間を記録したうえで風邪を発症するかどうか調べた(余談だがウイルスを体内に入れて研究するその手法に驚く)。結果、7時間以上の睡眠が最も発症しにくく、5時間以下の睡眠の人は7時間睡眠に比べて4.5倍も風邪を発症しやすかったのだ。

睡眠時間だけでなく“眠りの質”も関係する。20代から50代の健康な男女153人に、風邪のウイルスを鼻から投与し、5日間ホテルで過ごさせた。実験前の2週間、良い眠りが得られているかを評価し、3群に分けて風邪の発症率を調べたところ、眠りの質が低いほど風邪の発症率が高かったのだ。

忙しいビジネスパーソンも、せめて睡眠は「5時間」を切らないように、かつ質を高める工夫をしよう。

(6)飲酒 毎日お酒を飲むと風邪のリスク54%低下

べろんべろんに酔っ払うのは決してお勧めしないが、「適度な飲酒」なら悪いとはいえない。東北大学大学院教授の永富良一氏らが、仙台で勤務する30代後半から50代後半の勤労者約900人を対象に、過去1年間の「風邪発症と生活習慣」の関連を調査したところ、特定の食べ物摂取や運動量よりも「アルコール頻度の高い人」が風邪にかかりにくいという結果であった。

「あくまで飲酒“量”ではなく“頻度”です。アルコール頻度が▽週3回以下▽週4~6回▽毎日で比較すると、毎日飲む人は飲まない人に比べて風邪にかかるリスクが54%も低下したのです」

ストレス軽減や血流改善で免疫力を高める側面があるのかもしれない。特に上気道(鼻まわり)を温めることもいい。しかし、飲みすぎは免疫力を確実に低下させる。

「ジョージア州で行われた調査では新たに発症した結核患者の半数近くがアルコール依存症者でした。日本においても結核患者は都市部に偏在し、路上生活者やアルコール依存症との関連が指摘されています」(望月氏)

大和田氏も「血圧が上がり、糖代謝にも悪影響がある。ネガティブな作用も考えて適量で」と話す。「寝つき」はよくなるが、「睡眠の質」を低下させるため、ほどほどに。