何を食べても、いつもより太りやすくなってしまう

一例として、脂肪を溜め込む働きのある時計遺伝子の1つ、BMAL1も本来なら夜に大きく増えるが、体内時計の乱れで一日中ずっと分泌されているような状態になれば、何を食べてもいつもより太りやすくなってしまう。

「年をとるほど1度乱れたリズムを元通りにするのに時間を要する」(中村氏)こともわかっている。

対策としてはパンチの効いたリセットをすること。在宅勤務の場合もできる限り日中は日光を浴び、反対に就寝前は明るすぎる場所を避ける。そしていつも通りの時間に食事をする。朝型でも夜型でもいいが、日々“規則性”を保つことが重要なのだ。

さて体内時計の研究が進み、病気の発症にも時刻が関係することがわかってきた。感染症対策にちなんで最後に面白い報告を紹介しよう。

図6を見てほしい。ウイルス感染と細菌感染で発熱時刻が違うのだ。

細菌感染による発熱とウイルス感染による発熱

「古い研究ですが急性発熱を起こした幅広い年代の約2000人を対象に分析すると、細菌性の発熱は午前8時のピークが多く、ウイルス性は18時付近という傾向にありました。最初にいつ熱が上がったかどうかで、ウイルス性か細菌性かを判断する、1つの診断目安になると思います」(中村氏)

個体が違っても発熱時刻(リズム)は一緒。誰の体でも時計遺伝子が常に働いているのがわかるような研究結果だ。感染症の発症リスクを下げる生活習慣と、自分なりのリズムを大切に。

▼鼻まわりを温めるとウイルスが増殖しにくい
冒頭に記したライノウイルスは、温度が低い環境で増殖することがわかっている。ライノウイルスは33度で培養した細胞に感染すると、その細胞を壊してしまうが、37度であれば壊れない。「つまり、鼻まわりの粘膜細胞の温度が保たれていると、感染症の原因ウイルスが侵入しても増殖しにくくなる可能性が高い」と永富教授。人の体内の奥深くや口腔内はおよそ37度。33度は鼻腔内の一般的な温度だ。寒い環境では空気の入り口である鼻腔内を冷やさないようにマスクで保温も良し。
大和田 潔
大和田 潔(おおわだ・きよし)
東京医科歯科大学臨床教授
東京生まれ。福島県立医科大学卒業後、東京医科歯科大学医学部大学院修了。秋葉原駅クリニック院長も務める。
 

山田 浩
山田 浩(やまだ・ひろし)
静岡県立大学薬学部教授
1981年、自治医科大学医学部卒業。94年、同大学大学院医学研究科博士課程修了。専門分野は臨床薬理学など。
 

望月理恵子
望月理恵子(もちづき・りえこ)
管理栄養士・健康検定協会理事長
企業や医療機関の監修・栄養顧問として、栄養・美容学の分野で情報発信を行う。
 

永富良一
永富良一(ながとみ・りょういち)
東北大学大学院医工学研究科教授
1984年、東北大学医学部卒業。同医学系研究科助手などを経て現職。運動機能、身体活動、防衛体力の研究に従事。
 

熊沢義雄
熊沢義雄(くまざわ・よしお)
順天堂大学医学部非常勤講師
元北里大学教授で日本細菌学会名誉会員。感染免疫と生薬成分の免疫薬理作用の研究に従事。
 

中村孝博
中村孝博(なかむら・たかひろ)
明治大学農学部准教授
2005年、名古屋大学大学院修了。博士(農学)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校などで生体リズムに関する研究を行う。
 
(図版作成=大橋昭一)
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