新たな稼ぎ頭を早期発見する

そのうえで、高橋部長は第1四半期の予想外の減速が長引くケースに備え、新たな環境での成長エリアの発見に注力するよう指示しました。具体的には、担当者は顧客と接触する際、「今後の注目の分野はなんですか?」といったヒアリングを徹底しました。

高橋部長の考えにはリーマンショック時の経験が生きています。リーマンショック時も定期購入すら減ってしまい、稼ぎ頭となったのは新規事業だったからです。前回はがむしゃらに取り組んだことで成長エリアを発見できました。一方、今回は達成ライン分析によって確率の高いアプローチに集中することで、新たな稼ぎ頭の早期発見を目指したのです。

ここで重要なことは、まず、第1四半期で生じたマイナス20%の危機に際し、営業部の実績データに基づく達成ライン分析によって、下方修正後の目標を達成する方法が具体的に示されたことです。商談額まで落とし込んで把握できたことで、担当者の奮起のみに頼らない3つのアクションプランを、高橋部長は提示できました。

「とりあえず予定だけ入れた」担当者は要注意

ここでもうひとつの管理職の重要な習慣は観察力を磨くことです。

テレワークでは部下の働く様子が見えにくく、管理職は不安を感じます。状況を把握するため、より多くの報告を求めたくなります。報告が増えると、担当者が顧客のために割く時間は減り、担当者は管理職により具体的なサポートを期待し、多くの場合失望します。いずれも成果にはつながりません。

管理職はパイプラインやスケジューラーのデータを観察して、適切なタイミングで部下をサポートすることが求められています。

それは先ほどのような達成ライン分析を実践するためにも必要な能力です。A商事では、管理職が部下のスケジューラーを見る際に2つの点に注目しています。

まず、具体性です。特に顧客と接触する予定では、トーキングポイントやFAQ(よくある質問)が用意されているかを見ています。

次に、進捗です。パイプラインに関連する仕事に時間を配分しているか、また、それらの仕事は進捗しているかを見ています。

報告会議や日報では、話し方や表現により、この2点は明確には伝わってきません。スケジューラーの内容を確認することで、いつどのような行動をしたかを正確に把握することができます。したがって、報告関連の仕事を減らしても部下へのサポートの頻度や質は落ちません。