“とりあえず面談”をやめ3つの習慣で営業トップへ
私は大学院卒業後、2001年にゴールドマン・サックス証券に入社し、東京で債券や証券化商品などを扱う営業部門で働いていました。2006年から約3年間は、ゴールドマンのニューヨーク本社に赴任し営業部門で働くことになり、これが仕事のやり方を変える契機になりました。
まずニューヨーク本社で驚いたのは、営業担当者が顧客企業を訪問することが日本と比べて格段に少ないことでした。電話とメールで巧みに顧客との信頼関係を築き、巨額の取引を成立させていくのです。1000億円超の取引ですら対面せずに、済ませてしまうことが普通でした。
東京での営業活動といえば顧客企業に足しげく通い、膝詰めで信頼関係を勝ち取ってきたものでした。一方で国土の広い米国では、巨額な取引でさえ非対面型の営業手法が主流です。会わなくても工夫次第で信頼関係は構築できるという前提がある。しかも段違いの成果を出すのです。これが私自身が体験した非対面営業のすごさでした。
私は2009年に帰国後も、非対面営業を取り入れて実践しました。その結果、2012年に東京の証券部門で営業成績トップになることができました。私自身、特別な才能やスキルを持っているとは思っていません。むしろ郊外のサラリーマン家庭で育ち日本で教育を受けた「普通の人」です。ただ米国勤務を経て仕事のやり方を変えたのです。
心がけたのは「データを集める」「計画をスケジューラーに記入する」「その計画を上司や同僚に公開する」という3つの習慣を実践することでした。
メールや電話は「御用伺い」ツールではない
まず1つ目の「データを集める」ことの重要性をお伝えしましょう。非対面営業で成功するには事前の準備が欠かせません。顧客の表情やしぐさといった、いわゆる非言語情報が乏しく、話す内容が重要になるからです。
これまでの対面型営業であれば、電話やメールといったツールは訪問するための日程調整手段と捉えている人が多いのではないでしょうか。ただ非対面営業になると、電話やメールこそが本番です。本番での成功は事前準備で決まるといっても過言ではありません。
システム開発のマツリカの調査によると営業職でテレワークに取り組む人の最も大きな課題は「オンラインでの商談や社内会議での意思疎通」が難しいということでした。
そこで私が提案したいのが、顧客ごとに先方が興味を示す話題とこれまでの経緯をまとめることです。担当者の記憶や手書きのノートに頼っていては満足に答えられません。
顧客の目的や関心、過去に得たフィードバック、話しやすい時間帯、好まれるアプローチの方法(電話、メール、その他)などを、顧客別に検索可能なデータの形で整理しておくことが必要です。そうすればとっさに相手から電話がかかってきても慌てることなく対応することができます。
米セールスフォース・ドットコムに代表されるような顧客管理システムも役に立ちます。また、勤務先にITツールがそろっていなくても、マイクロソフトのアウトルックやそれと同期したスマートフォンの連絡帳にあるメモ欄をフル活用すればデータを整理することができます。
大切なのは対面型営業で移動に費やしていた時間を「顧客を知る」ために充てること。日経新聞電子版に顧客企業名や担当業界のキーワードを登録しておいたり、顧客の趣味に関する便利なWEBページをブックマークしたりして、情報感度を高めることです。