選ばれなかった人がやる気をなくさないか
私がGEにいたとき、講演でこの話をすると必ずと言ってよいほどもらう質問がありました。それは、「研修に選ばれなかった人たちが、やる気をなくしてしまいませんか」というものです。
この質問に対して私は、「GEでは従業員を業績によって差別化しますが、評価を固定化することはありません。敗者復活は大いにありますし、逆に最優秀者に選ばれたとしても、あるいはクロトンビルの研修を受けたとしても、将来のキャリアについては何の保証もありません」と答えていました。
さらに、「研修に選ばれなかったからといってやる気をなくすような人は、そもそもGEで働こうなどと思いませんし、GEとしてもそういう人は採用しません」と付け加えたり、「日本企業の良くない点は、ある人物に対する人事評価がなされると、その評価がずっと固定化されてしまうことではないでしょうか」とコメントを加えたりすることもありました。
辞められて困るのは業績上位の人か、下位の人か
逆に私から聴衆に質問することもありました。「皆さんの会社の従業員を人事評価に基づいてランキングしたとき、辞められて困るのは上位20%の人ですか、下位20%の人ですか」と。
一人ひとりの従業員の業績が異なり、組織に対する貢献度がそれぞれ違っているのであれば、その違いに見合った処遇を行うべきではないでしょうか。
当然多くの企業では、給与などの昇給額やボーナスなどのインセンティブ報酬、あるいは昇進・昇格などによって、個々人の貢献に見合った相違を生みだしています。しかしなぜ研修など人材開発の機会においては、そうした相違を生み出すことにためらいを持つのでしょうか。
GEでは、研修を総合的報酬の一部であると考えています。
給与水準は、アメリカの企業で言うと、「中の上」か「上の下」というところで、決して高くありません。経済的な報酬は大したことないにもかかわらず、GEで働きたいと入社してくる人たちは、自己の成長に貪欲な人たちです。
ハードワークで知られるGEには仕事を通じた成長の機会がたくさんありますが、仕事以外にもそうした人々を引き付け、成長させ、引き留めるツールを持っています。それがクロトンビルなのです。