「私が今感じたことをそのままお伝えしてもいいですか?」
3 主観的なフィードバック
コーチ自身が感じたことをそのまま相手に伝えることを「主観的フィードバック」と言います。主観的フィードバックを行う場合には、ラポールを崩さないように最初に「私が今感じたことをそのままお伝えしてもいいですか?」と相手の許可を取りましょう。
この許可取りの言葉を一言入れるだけで、相手はコーチ側のフィードバックを受け入れる心構えができます。主観的フィードバックは時として相手の心に刺さり過ぎる場合もあるので、事前に許可を取っておくのです。
では、主観的フィードバックの例を挙げてみましょう。
「私は、あなたがまだ何かに怯えているように感じます」
「私は、あなたはこの仕事にまだ未練があるのでは、と感じました」
「私は、あなたが自分の才能を恐れているのかも、と感じました」
このように「コーチが感じたこと」をそのまま伝えます。
その際、断定的に伝えないことが大切です。「……のように」「……では?」「……かも?」のような表現を使い、あくまでコーチ自身が個人的に感じたこととして伝えます。
もうひとつ大事なポイントがあります。それは、「私」を主語にして、あなたを主語にしないということです。
「Iメッセージ」とも言いますが、「私は」を明確にすることで、あくまで個人的に感じたことであり、ひとつの見方であることが伝わりやすくなります。
「あなたは」を主語にしてしまうと、「私」以外の第三者も含まれているように感じられるので、断定的な物言いに伝わる可能性があります。次の2つの例を比べてみるとわかりやすいでしょう。
「私は、あなたが強がっているように見えます」(Iメッセージ)
「あなたは強がっているように見えます」(YOUメッセージ)
このように、主観的フィードバックは、Iメッセージで断定的な表現を使わず、コーチ自身が感じたことをそのまま伝える手法です。
このような主観的フィードバックにおいては、コーチの感じたことが「正しい」「合っている」かが重要なのではなく、コーチからの主観的なフィードバックを受けて、「自分が何を感じ、何に気づいたか」を振り返ることがより重要です。
主観的フィードバックの特徴は、客観的フィードバックとは異なる、生身の人間が感じたことをそのまま伝えるからこそ、感じることができる「心の触れ合い」のような場を創り出してくれることにあります。
時として、相手が涙を流すくらいに深い気づきを得ることもあります。
「人間には自分のことが見えない」
だからこそ、さらに自分を高めるためにコーチによるフィードバックは必要なのです。