「私が今感じたことをそのままお伝えしてもいいですか?」

3 主観的なフィードバック

コーチ自身が感じたことをそのまま相手に伝えることを「主観的フィードバック」と言います。主観的フィードバックを行う場合には、ラポールを崩さないように最初に「私が今感じたことをそのままお伝えしてもいいですか?」と相手の許可を取りましょう。

この許可取りの言葉を一言入れるだけで、相手はコーチ側のフィードバックを受け入れる心構えができます。主観的フィードバックは時として相手の心に刺さり過ぎる場合もあるので、事前に許可を取っておくのです。

では、主観的フィードバックの例を挙げてみましょう。

「私は、あなたがまだ何かに怯えているように感じます」
「私は、あなたはこの仕事にまだ未練があるのでは、と感じました」
「私は、あなたが自分の才能を恐れているのかも、と感じました」

このように「コーチが感じたこと」をそのまま伝えます。

その際、断定的に伝えないことが大切です。「……のように」「……では?」「……かも?」のような表現を使い、あくまでコーチ自身が個人的に感じたこととして伝えます。

日本人経営者がクライアントの女性と業務契約の内容を詳細に話し合っている。
写真=iStock.com/GCShutter
※写真はイメージです

もうひとつ大事なポイントがあります。それは、「私」を主語にして、あなたを主語にしないということです。

「Iメッセージ」とも言いますが、「私は」を明確にすることで、あくまで個人的に感じたことであり、ひとつの見方であることが伝わりやすくなります。

「あなたは」を主語にしてしまうと、「私」以外の第三者も含まれているように感じられるので、断定的な物言いに伝わる可能性があります。次の2つの例を比べてみるとわかりやすいでしょう。

「私は、あなたが強がっているように見えます」(Iメッセージ)
「あなたは強がっているように見えます」(YOUメッセージ)

このように、主観的フィードバックは、Iメッセージで断定的な表現を使わず、コーチ自身が感じたことをそのまま伝える手法です。

このような主観的フィードバックにおいては、コーチの感じたことが「正しい」「合っている」かが重要なのではなく、コーチからの主観的なフィードバックを受けて、「自分が何を感じ、何に気づいたか」を振り返ることがより重要です。

主観的フィードバックの特徴は、客観的フィードバックとは異なる、生身の人間が感じたことをそのまま伝えるからこそ、感じることができる「心の触れ合い」のような場を創り出してくれることにあります。

時として、相手が涙を流すくらいに深い気づきを得ることもあります。

「人間には自分のことが見えない」

だからこそ、さらに自分を高めるためにコーチによるフィードバックは必要なのです。

【関連記事】
ファーストクラスの女性は何が一番違うか
いちいち「それ意味ありますか」と問うバカな人材を干してきた日本社会のツケ
知らないうちに「リストラ予備軍」にされる人のチャットの特徴
これから本格化する「コロナリストラ」で人事部に狙われる社員3タイプ
日本企業の経営者が低学歴ばかりになってしまった根本的理由