この調査にもとづき、APPの鉄鋼タスクフォースと日本の鉄鋼連盟は、これら6カ国の製鉄所に世界最高水準を誇る日本国内の製鉄所の省エネ・環境技術を移転・普及すれば、調査当時の生産規模を維持した場合でも、CO2排出量を年間1億2700万トン削減することができると結論づけた。この削減量は、90年度の日本の温室効果ガス排出量12億6100万トンの10%強に当たる。

周知のように日本は、現在、08~12年の平均値で温室効果ガス排出量を90年比6%削減するという、京都議定書によって義務づけられた目標を達成するために大変な努力を重ねている。日本鉄鋼業が実現した既存の最高レベルの省エネ技術をAPPに参加する諸外国に普及できれば、京都議定書で日本に義務づけられた規模の温室効果ガス排出量の削減は、すぐにでも超過達成されることになるわけである。

鉄鋼業界ほどには国際的な取り組みが進展しているわけではないが、セクター別アプローチの潜在的効果の大きさという点で、特筆に値する分野が別にある。石炭火力セクターである。

やや意外なことに、キロワット時当たりCO2排出量が最も大きい発電方式である石炭火力は、じつは「CO2削減の切り札」と呼ぶべき存在である。

ここで求められるのは、最も多くCO2を排出する石炭火力の効率を改善することができれば、CO2排出量を最も多く減らすことができるという、柔軟な「逆転の発想」である。05年の発電電力量に占める石炭火力のウエートを国別に見ると、日本が28%であるのに対して、アメリカは51%、中国は79%、インドは69%に達する。発電面で再生可能エネルギーの使用が進んでいるといわれるドイツにおいてでさえ、石炭火力のウエートは50%に及ぶ。