看護師が乗り、配車システムを使って患者のもとへ

これまでのオンライン診療では、音声による応答と、画面に映る顔色などで、医師は判断するしかない。触診などができないため、限られた情報の中で診断しなければならない医師にとっては、負担がかかる診察となる。それを補完するため、DtoPwithN方式では看護師が医師の指示に従って、心拍測定など患者の検査や、必要な処置を行えるようにしている。看護師は検査結果や問診などの情報を、「情報共有クラウドシステム」に記録し、担当医師とデータを共有できるようにする。

また、地方ではスマートフォンやタブレットの操作に不慣れな高齢者が多い。通信環境を備え、プライバシーや情報セキュリティが確保され、看護師が補助しながら医師がオンライン診察を行うのに最適な環境が、ヘルスケアモビリティには備わっている。

ヘルスケアモビリティでオンライン診療を行う手順としては、移動診療車に伊那市の手配した運転手と、病院の看護師が乗り、モネテクノロジーズの配車システムにより予約された患者の自宅や、事前に決められた駐車場などへ訪問することになる。

クリニックや薬局の機能も目指していきたい

2019年11月には「改正医薬品医療機器法」が成立した。現状では対面に限られている、薬の飲み方を教える服薬指導のオンライン化が、初回は薬剤師が対面指導することなどを条件に解禁されることになった。伊那市では2020年度に地元薬剤師会などと実証を行いたいと考えている。

オンライン服薬指導が可能になっても、薬は車内で処方することはできない。伊那市では買い物弱者対策としてドローン物流の開発実証を終え、2020年7月から高齢者が多い山間地域でのドローンによる買い物支援「支え合い買い物サービス」を開始する。医療型MaaSと物流の連携が可能になれば、患者の利便性は一層、向上するはずだ。

オンライン診療はまだ始まったばかりであり、厚生労働省ではその普及状況や、安全性、有効性などを検証した上で、定期的に指針の見直しを行うとしている。

新型コロナウイルス感染防止対策として、オンライン診療を初診から、対象疾患を限定せずに受診できるとした特例措置については、暫定期間が過ぎても医療安全を保つことができるのかといった議論もあり、今後の国の対応が注目される。

フィリップスやモネは、移動型でオンラインのクリニックや薬局も目指している。その場合、医師が医療用として扱う診断装置も、モビリティに搭載されることになるだろう。診断にAIを組み合わせることで、医師の負担軽減や、患者の安全性向上をはかることも期待されている。簡易的な処置については、遠隔ロボティクス技術などで対応できる可能性もある。

もちろんその先は、モビリティの自動運転化を、モネは目指している。