「ここに暮らし続ける」願いを実現するために

伊那市長の白鳥孝は、ヘルスケアモビリティお披露目の式で、「私たちは『伊那に生きる、ここに暮らし続ける』という決心をしています。地方が高齢化や少子化で小さくなっていく流れを、なんとか新しい技術でカバーしたい。地方にとって、医療型MaaSは画期的な取り組みなのです」と、期待を込めた。

モネ社長の宮川潤一は「多くの自治体の方と話す中で、医療で困っているところがこんなに多いのかと感じています。私たちがそれぞれの故郷で暮らし続けていくためには、こういうクルマを増やしていくことが必要です」と述べて、ヘルスケアモビリティの意義を強調した。

サービス主体の時代はいかに“見える化”できるか

オランダ発祥のフィリップスは、照明やCDを生み出した総合電機メーカーとして有名だったが、現在はヘルスケアテクノロジーに関連した事業に経営資源を集中している。その日本法人で社長を務める堤浩幸は、大学卒業後、日本内外の通信機器メーカーでネットワークの構築などを手がけてきたITの専門家である。

「なぜフィリップスに入ったかというと、変な話ですが、一番IT化が遅れているように感じたからです。ということは、それをやれば、もっと活性化するし、一つひとつの事業が一緒に動けば、シナジー効果が出る。特にいまの医療は、かなり縦割りです。それを解消すれば、もっと素晴らしいことができると考えたのです」

そのフィリップスが最近力を入れているのが、ヘルスケア領域の製品にモバイルとモビリティを掛け合わせることだ。それにより、従来の固定化し、画一化したヘルスケアサービスから、「最適配置が可能なヘルスケア」に変革できるからだ。その具体化のひとつがヘルスケアモビリティである。

「MaaS時代は、ハード主体ではなく、サービス主体となります。ではサービスとは何かというと、価値創造です。価値を生み出さないものに、消費者は投資しません。ポイントは、具体的に見える化できるかどうかです」