もし北方領土に「一国二制度」が適用されたら日本はどう行動するか

では仮の話として、北方領土の返還を進めるために、まずは不十分な主権でもいい、ロシアの制度を50年間認めてもいいという一国二制度を認める判断を日本がやったとしよう。

ロシアのプーチン大統領は、北方領土を日本に返還した場合に、そこにアメリカ軍が配置されるのではないか? という懸念を示している。

北方領土に50年間ロシアの制度を認めるなら、そのような懸念も晴れる。

ここまでの大胆な政治判断を日本の国会議員がやれるとは思わないが、もしそれをやってのけ、とりあえず北方領土の主権が日本に戻ってきたとして、日本側は、この一国二制度を当然のことと考えるだろうか?

そんなことはない。領土返還のために渋々了承したものだと考えるに決まっている。隙があれば、一国二制度など早く終了して、北方領土に日本の完全なる主権を及ぼしたいと考えるはずだ。

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仮に日本が北方領土について一国二制度を認めたとしても、香港騒動と同じような隙が生じれば、中国と同じようなことをするだろうし、それをしなければ、お人好しというかバカそのものだ。日本の国会議員は、そこまでお人好しでバカなのか?

さらに、日本とロシアの間で、日本が渋々認めた一国二制度に関し、他国がとやかく言ってきた場合に、日本の国会議員たちはどうするのか?

たとえば北方領土について一国二制度を日本有利に変容するチャンスが到来し、日本があの手この手を尽くす試みをしたとする。

そうすると、もちろんロシアからは、「一国二制度違反だ!」「約束違反だ!」という主張が出るだろう。

そのときに、中国や韓国までもが、「日本はロシアとの約束を守れ!」と言ってきたらどうするのか?

今、「中英共同声明を守れ!」と叫んでいる日本の国会議員に限って、このようなときに「中国と韓国は、日ロの問題に口を出すな!」と叫ぶだろう。

これこそがアンフェアの典型だ。そういう態度振る舞いはかっこ悪いことだと思わないのかね。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

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それでも、日本は、中国に向けてメッセージを発する必要がある。ただし、それは中国を動かすためのものではなく、かつ国内向けのポーズのためのものでもない。

それは今後、日本が、日本の主権の行使をするにあたり、諸外国から口を挟まれないようにするためのメッセージだ。まさに日本の主権を確保するためのメッセージ。

それはフェアの思考から、「憂慮する」対象を明確化することによって導かれるものだ。「香港情勢に憂慮する」という抽象的メッセージではクソの役にも立たない。

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(ここまでリード文を除き約2800字、メールマガジン全文は約1万200字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.203(6月9日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【実践版 フェアの思考(2)】英米などの非難声明で議論沸騰! 中国「香港問題」を北方領土問題に置き換えて考えてみる》特集です。

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