日本の死者数が少ないのは数字のマジック?

日本政府の対応のお粗末さを嘆く一方、「死者数が少ない」という不思議な現実はどう解釈するべきなのでしょうか?

5月28日の時点で、日本では新型コロナに直接起因する死者数は867人、これは100万人あたり6.78人に相当します。米国では合計10万442人がなくなっており、100万人あたり303.45人という数値です。「パンデミックへの対応の成功例」と見なされているドイツでさえ、8411人。100万人あたり100.39人が亡くなっているのです。

国別100万人あたりの死者数

被害の大きい米国、欧州と比較すると日本の被害は抑えられていることがデータで明らかになっています。しかし、手放しに喜びの声を上げるのは早いかもしれません。この数字をアジア太平洋地域で比較すると、日本の数値は決して「断トツ優秀」とは言えないからです。

インドネシア 5.39人
韓国 5.25人
オーストラリア 4.04人
シンガポール 3.93人
マレーシア 3.55人
インド 3.28人
中国 3.22人
台湾 0.29人

このようにアジア圏内での比較となると、「日本の1人勝ち」という構図とは違った事実が見えてきます。このウイルスの戦果の分析をする上では、米国・欧州に限定せず、アジア太平洋地域まで含めて冷静に俯瞰する必要があるのではないでしょうか。

最大の醜態は「日本のIT後進国」

なお、同誌では日本の「ウイルス対応で露見したITの後進性」についても取り上げられています。

医師は手作業で専用フォームへ感染報告の情報を記入し、地元の保健部門にFAXで送信。情報の編集がなされた後、政府へ送信されます。これにより、「新型コロナと最前線で戦う医師が、詳細な情報を記入するのに貴重な時間をムダにしていた」と辛口コメントを受けることになりました。

また、これは同誌では取り上げられていないことですが、筆者が個人的に問題だと思うのが、ビジネス現場での対応の問題です。感染拡大防止のためにリモートワークをしているはずなのに、「ハンコをもらうために出社」という笑えない話も出ています。ハンコ文化はウイルスより強かったということで、変化への対応力の低さと、日本のITにおける後進性が露呈してしまったと言えるのではないでしょうか。

さらに我が国はIT活用の面で、諸外国の対応に学ぶべき点は少なくないと感じます。まだまだ不明な点も多い新型コロナとの戦いにおいては、「データと情報」は勝敗の鍵を握ります。我が国では「このウイルスとの戦いでは3密を避けろ」という情報伝達がうまく機能したことで、うまくいっている点もあるでしょう。米国は携帯電話のGPSの移動記録から得られるビッグデータを活用することで、ウイルスとの戦いに挑戦しています。実際にGoogleは移動データを公開したことで、人の動きを見える化することに貢献しています。また、中国はAIを用いた画像データ解析技術を活用するなど、感染診断に対抗するためにITを駆使しています。

テクノロジーを駆使する他国とは、この点において特に日本のIT後進国ぶりを露呈する結果となったのではないでしょうか。平時の際にも日本のITオンチぶりは問題視されていますが、コロナ禍という有事の際にも、うまく立ち回れていないことが国内外で認識される結果となりました。