夕方に「昼ごはんを食べている」と言い張る母は認知症だった

そこで降りかかったのが母親の認知症だ。70歳を過ぎたあたりから徐々に食が細くなり、食事の支度をしなくなっていた。心配になった金田さんは、その頃から朝と夜の2回、母親に食事を届けていた。ただ、母親は昼だけは自分で作った焼きそばを食べていた。

2015年5月、夕方に晩ご飯を届けに母の家を訪れると、母親は焼きそばを食べていた。

インスタントのソース焼きそば
写真=iStock.com/akiyoko
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金田さんが「あれ? 晩ごはんも焼きそば?」と尋ねると、「何言ってるの? まだお昼でしょ? これは昼ごはんよ」と答える。金田さんは違和感を抱きながらも、流してしまった。

そのうちに、「お母さんが外で転んでいる!」という連絡が、度々近所から入るようになる。金田さんは「脳梗塞かもしれない」と思い、病院へ連れて行った。脳のMRIを撮ったところ、脳の萎縮が見られ、母親は認知症と診断された。介護認定調査を受けると、要介護1の認定がおりた。

母親が認知症だと分かっても夫は、「これからも2軒分の家事をするなら介護してよし。自分は一切関知しない。家の用事も一切手伝わない」と宣言。機嫌が悪いと「お前が何でもやってやるから甘えて頼ってくるんだ。放置しても死なない!」と怒鳴る。

時々来る姑からも、「嫁にきたのに実母の世話をするのはおかしい!」と責められた。金田さんは、夫や姑に遠慮しながらも、通い介護を続けた。

「母が認知症と診断されてからは、認知症に関する勉強会などに積極的に参加しました。介護に対する不安やストレスがあり、同じ境遇や悩みを持つ人とつながりたいと思ったのですが、老老介護の方や、家族で協力し合って介護している人ばかり。私は孤独に押しつぶされそうになっていました」

夫の「15年間裏切り」が発覚し、離婚調停に

金田さんは夫が不機嫌になることを恐れ、夫の手前「ちゃんとしてよ!」と母親につらくあたった。

「夫はもともと大学の友だちだったので、機嫌がいいときの夫婦仲は良いと思っていました。しかし、夫は15年前から、私を裏切っていたのです」

夫は時々、「会社の飲み会」とか「友だちと会う」などと言っては、夜に外出したり、休日に家を空けたりした。それがあまりに頻繁になり、おかしいと思った金田さんは、何度も夫のスマホのロック解除を試み、ついに成功。2019年1月、夫の裏切りを知った。

「一人息子が高熱で苦しんでいるのに『病院ならタクシーで行け!』と怒鳴っていた人が、人妻が『お腹が痛い』とメールをしてきただけで、『大丈夫? 病院まで送るよ? 夜中でも早朝でも自分を使って?』とすぐさま返信していて、正直吐き気がしました」

心の底から夫を軽蔑した金田さんは、カウンセラー2人、弁護士3人に相談。全員から「すぐにでも夫から逃げなさい」とアドバイスを受ける。それでも、経済的なことを考えると、なかなか行動に移せない。何度も家を出ようとしては、躊躇ちゅうちょしてしまう。