「たたく」「どなる」は脳に悪影響
たたいたり、どなったりすることが、子どもの成長・発達のために必要だと思っている人も少なくないでしょう。ですが脳の研究で、たたく、どなる子育てが脳の成長発達によくないことがわかりました。厳しい体罰により、前頭前野(社会生活に極めて重要な脳部位)の容積が19.1%減少、言葉の暴力により、聴覚野(声や音を知覚する脳部位)が変形してしまうのです(福井大学友田明美先生ほかの研究結果2011年)。
でも、脳は回復すると言われています。たたく、どなる子育てを今からやめましょう。
親による体罰を受けた子どもと、受けていない子どもの違いについて、約16万人分の子どものデータに基づく分析が行われています。その結果、親による体罰を受けた子どもは、親子関係の悪さ、周りの人を傷つける等の反社会的な行動、攻撃性の強さとの関連など「望ましくない影響」が大きいことが報告されています。その影響は幼児期だけにとどまらず、成人になってからも続く可能性があります(ガーショフ他「手でたたく体罰と子どもの結果:これまでの議論と新しいメタアナリシス」2016年)。
「親からの体罰禁止」が定められた本当の理由
2019年6月に「親権者からの体罰禁止」を盛り込んだ「児童福祉法等改正」が国会で満場一致で可決、成立。改正法では、親は「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」とされ、厚生労働省は、子どもの権利をベースとした「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」というガイドラインを策定(筆者も委員として参加)。2020年4月からスタートしました。
この法律がスタートしたからといって、ちょっとたたいたからすぐに通報されて逮捕されるということではありません。これは理念法というものです。もちろん、たたいたことで子どもがけがを負ったりすれば傷害罪などになる可能性もあります。それは、今までと変わりないでしょう。
ガイドラインにも書かれているように「親を罰したり、追い込むことを意図したものではなく、子育てを社会全体で応援・サポートし、体罰によらない子育てを社会全体で推進することを目的」としたもの。親だけががんばって育てるのではなく、社会全体が同じ意識を持って子どもを育てていこうということです。