※本稿は、高祖常子『男の子に「厳しいしつけ」は必要ありません! どならない、たたかない!で才能はぐんぐん伸びる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
虐待で亡くなるのは「男の子」が多い
男の子は強くたくましく、女の子はかわいらしく優しくなんて、ついつい思っていませんか。たとえばちょっと大きい子なら、友だちにいじめられたときに、「泣き寝入りなんかしないで、やっつけてこい」とか。
実は虐待で亡くなった子どもの数を見てみると、男子51.3%、女子45.6%(厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」2019年8月第15次報告書。第1次~15次の総数)となっています。男の子の方が多くなっていますね。これはまさに、「男の子はたたかれて覚える」「男の子は強く育てなくてはならない」というジェンダーの思い込みによるものだと思います。さらに「女の子は顔に傷を付けてはいけない」などの考え方もあるでしょう。
男の子がなかなか言うことを聞かないと、手を振り上げ、それでも言うことを聞かないと、たたいても効かないのか、たたき方が弱いからわからないのか……とつい、たたく加減が強くなっていく。それがエスカレートして、虐待や虐待死につながってしまうこともあるのです。
たたかれても「人の痛み」はわからない
男の子は特にやんちゃだし、「たたかれないと人の痛みがわからない」と思っている人もいるでしょう。実際にあった例です。幼稚園の先生から、友だちをたたくことがあると聞いたパパが、「友だちをたたいちゃダメだ」と子どもに伝えたそう。すると、子どもから「パパはたたくのに、なんで僕はたたいちゃいけないの?」と聞かれたそうです。しつけの一環としてたたいて育てていたパパは、返す言葉がなかったということです。
たとえば、熱いものに間違って触ったことがあるから、気を付けるようになった人もいるでしょう。でも、実際触ったことがない人だって、「これは熱い」とわかるものには触らないように気を付けることができていますよね。包丁で指を切った経験がないと、包丁を使うときにケガをしないように気を付けられないということではありません。
また、「たたかれたことは覚えているけれど、なぜたたかれたのか記憶がない」と子どものころの体験を話すパパやママにもよく遭遇します。親からたたかれて怖かった記憶は残りますが、人の痛みがわかるようになったということにはつながっていないのです。