WHOに加盟したければ、「一つの中国」を受け入れろ

今回も中国は「台湾がWHOに加盟したければ、『一つの中国』の原則を受け入れろ」と迫っている。当然、台湾としては受け入れられない。しかし中国は一顧だにしない。それどころか、「WHO加盟を騒ぎ立て、感染症を政治問題化しようとしているのは台湾の方だ」と言い張っている。

WHOは中国との間で2005年に覚書を交わしている。その内容は「全世界の人に提供される」国際保健規則を、台湾については「中国が自ら適用する」というもので、台湾のWHO加盟を実質的に阻むものだとの指摘がある(若林正丈編『台湾総合研究Ⅱ―民主化後の政治―』調査研究報告書 アジア経済研究所 2008 年 第6章 台湾の国際参加 竹内孝之)。

WHO設立のもとになっている世界保健憲章にはこうある。

〈到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である〉

台湾の排除はこの憲章に反するものではないだろうか。

WHOテドロス事務局長の「中国礼賛」姿勢に対する非難の声

今回の新型コロナウイルス対応に関して、WHOと中国の関係は「蜜月」と批判されるに至った。中でもテドロス事務局長の「中国礼賛」姿勢に対する非難の声は高まる一方で、2020年5月1日までに「テドロス辞任を要求する請願書」に100万人以上が署名した。

いまでこそ英米などの被害が中国を上回っているが、武漢での対策や報告の遅れには明らかに問題があった。だがテドロス事務局長は当初からの中国礼賛を止める気配がない。むしろムキになって賛辞を送り続けているかのようにさえ見えるほどだ。あげくの果てにはテドロス事務局長はインターネット上で自身が人種差別的な中傷にさらされているとした上で、「個人攻撃は台湾から来ている」と発言。根拠に乏しいテドロス発言は、台湾人の神経を逆なでした。さらには台湾が排除された2020年5月18日のWHO総会で習近平国家主席が「中国は透明で責任ある対応を取ってきた」と強調する演説を行った。いくら何でもやりすぎではないだろうか、との印象はぬぐえない。