どうすれば高齢者の解約を防止できるのか。そのためには、高齢者が預金を解約する原因を特定しなければならない。

他行に比べ金利が安いからか、支店の統廃合で店舗が遠くなったからか、あるいは子に財産を承継させるためか……。こうした仮説をもって店舗へ足を運び、行員やお客様にインタビューを実施して、仮説の検証と深掘りを行った。

その過程で有力な原因として浮かびあがってきたのが、高齢の預金者が亡くなると、相続した子が預金をすべて引き出してしまうことであった。親が長年利用してきた銀行でも、子にとってはなじみがないため、ふだん自分が利用している銀行に預金を移してしまうのだ。

さらに、行員やお客様にアンケートを実施し、解約に影響している原因を探ると、やはり相続した子による預金引き出しが預金流出に最もインパクトを与えていることが確認できた。

原因が特定できれば、それを解決する策を考えればよい。このケースでは親である預金者が死亡したときに、相続者である子が自行で預金を継続してくれるようにすることだ。

他業界の事例でヒントとなったのが、携帯電話の「家族割引プラン」である。銀行でも、親子で契約するとさまざまな特典が受けられるサービスを提供し、早い段階から家族単位で囲い込んでおく。そうすれば、相続が発生しても他行へ預金を移す可能性は低くなるのではないか。

以上からわれわれは銀行における「親子安心プラン」の実施を提案し、この銀行では親子で口座をつくると金利の優遇や振込手数料の割引などが受けられるサービスをスタートさせた。

(構成=宮内 健)