大手銀行における事例
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大手銀行における事例

このケースにおける問題解決のプロセスを整理すると、図のように(1)仮説構築、(2)検証+深掘り、(3)施策オプションの評価、(4)実施プランへの落とし込みに分けられよう。

仮説構築の段階では、まずどこに問題の本質が存在するかを見極める。そのためにはモレや抜けがないよう全体の構図を捉えたうえで、問題を生み出している原因の仮説を構築することが重要である。この段階をいい加減に行うと、課題の本質を捉えない的外れな解決策しか導き出せない。

また、「せっかくいままでこの施策をやってきたのだから……」といった思い入れがあると、物事を見るレンズが歪んでしまう。しかし問題解決に取り組む際には、感情に引っ張られず、第三者の立場から冷徹に問題の本質を見極めるようにしなければならない。

次の「検証+深掘り」では労力を惜しまず現場へ足を運び、現場の人や顧客の話をよく聞くことである。現場や顧客の声に課題の本質、そして答えがある。

ただし、現場で検証+深掘りを行うだけでは、問題の解決にあたってどの仮説のインパクトが一番大きいかはわからない。そこでアンケート調査を用いて定量的に仮説のインパクトを把握し、各施策オプションの経済性を検証する。

こうして仮説を絞り込んだら、いよいよ実施プランへの落とし込みを行う。しかし、「家族割引」のようなアイデアがいきなり降ってくるわけではない。

そこで重要になるのが経験値だ。このケースで携帯電話の家族割引が浮かんだのも、組織の経験値が発揮されたからだ。

家族割引というアイデアだけ見ると、他業界の真似ごとに見えるかもしれない。しかしその解決策は事実に基づき、多くのロジックをつないで導き出したものである。単なる思いつきのアイデアとどちらが成功する確率が高いか。答えはいうまでもない。

(構成=宮内 健)