ドイツでもギスギスしている人間関係
では私が出身のドイツの国民がみんな隣人への優しさにあふれているのかというと、残念ながらそうではありません。ドイツでは新型コロナウイルスが問題になった初期のころから「社会的距離をとりましょう」ということが繰り返し言われてきたため、道で偶然知り合いに会っても昔のように近づかず、遠くから手を振ってお互いの健康を祈ります。
しかしその一方で、ドイツでの雰囲気も一部ではかなりギスギスしています。ミュンヘンに住む私の友達は道を歩いていたところ、通りすがりの女性に「ちょっとアナタ! 私の2メートル以内に入ったでしょ‼」とすごい剣幕で怒鳴られたそうです。ちなみに怒鳴った女性はマスクをしていなかったそうで、友達は「あんなに怒鳴るなんて飛沫のほうが心配」と漏らしていました。
ドイツでは4月下旬より、店での買い物や公共交通機関を利用する際、マスクの着用が法律で義務付けられていますが、これも多くのドイツ人のイライラを誘発しています。
コロナ以前のドイツでは「マスクをするのは不健全であり不審である」という考え方が一般的でした。そのため法律で着用が義務化された今でも、「なぜ国からマスクを支給されるわけでもないのに、自費で買ってマスクをつけなくてはならないんだ!」と怒りをあらわにする人もいます。
逆にマスクを着用していない人を駅員や警察に通報する人もおり、実にギスギスした状態になっています。
全員が科学者⁉ 「自分のほうがコロナに詳しい」というドイツの病
コロナ以前のドイツでは「あなたに関係ないでしょ?」という言いまわしがよく使われていました。ドイツ語で「Was geht dich das an?」ですが、英語でいう「Mind your own business.(和訳:余計なお世話だ)」と似たようなものです。要は「自分が何をしようが人には関係ないのだから指図はされたくないし、逆に自分も他人のやることに口出しはしない」という意味で、コロナ以前のドイツではこれがスタンダードでした。
しかし新型コロナウイルスの場合、感染をしないように自分自身が対策に気を配っていても、他人が不用心であれば努力は水の泡になってしまう場合もあるので、従来のドイツ流の「私が何をやろうがあなたには関係ないでしょう」という考え方は通用しなくなりました。
それに代わって現在のドイツで目立つのは「一億総科学者」現象です。医学とは縁のない一般の人々が科学者やどこかの先生になったかのような態度で、自分の知識こそが絶対だと言い張る人が少なくありません。
厄介なのはここでもまた相手のやり方が否定されがちだということです。日本の「コロナ自警団」や「自粛ポリス」もホメられたものではありませんが、ドイツで見られる一部のアグレッシブさや、一般人による専門家気取りもまた困ったものです。
いずれにしても、コロナ騒動が終息したころには人間関係も全て終わっていた、なんていうことにならないようにしたいものです。