一般の人のあいだでも人間関係がギスギスしています。私の知人の日本人女性はあるSNSに友達限定で娘と一緒に撮った写真をアップしたところ、「え? 外出しているのに、マスクしていないの?」とママ友から注意されたといいます。

実際には写真を撮ったのは自宅の庭先だったのですが、自らもストレスフルな毎日をおくるなかで反論する気も失せてしまったとのことです。

私自身、普段はSNSなどで割と気軽に写真を載せるのですが、先日ベランダで撮ったお弁当の写真をある記事にアップする際に「この写真を載せたら、お弁当を持って遠出していると思われないかな?」と気になってしまい、しばらく考え込んでしまいました。

自粛ムードはもとより、いつどこで発生するか分からない「コロナ自警団」のことを考えると、今やSNSなどインターネット上での「息抜き」さえも難しくなっています。

まるで戦時中? 「欲しがりません勝つまでは」

感染を広げないために外出を自粛することは大事です。ただし繰り返しになりますが、自粛というのはあくまでも自分の意思でやるべきことであり、他人の行動に必要以上に興味を持つことには慎重になったほうがよいでしょう。

こういった状況のなか、人を密告したりうわさ話をひろめるというのは先の大戦を思わせるもので、ツイッターなどのSNSでも「まるで戦時中の隣組のようだ」と話題になっています。

もちろん先日ニュースでも取り上げられた「PCR検査を受けた後、結果が出るまでに県をまたいで遠出をしてしまうような人」が反省すべきだとは思います。しかし何よりも問題なのは、今のニッポンでは先ほどの自宅の庭での写真のように「ただ楽しそうにしている」だけで批判のターゲットにされかねないことです。

新型コロナウイルスの蔓延による自粛は、本来は外出がメインのはずです。しかし「おしゃれをしている人」にも牙が向けられており、新型コロナウイルスについて分かりやすく説明することで定評のある岡田晴恵教授に対して、「とっかえひっかえ服を着替え過ぎ」「こんな状況でお洒落をするなんて」という声が一部で飛び交っています。まさに先の大戦のキャッチフレーズ「欲しがりません勝つまでは」を思わせる内容です。

通常、民主主義の国では怒りの矛先は政府に向かうものですが、日本では自分と同じ立場にいる一国民に向かいがちです。しかし言うまでもなく、楽しそうにしている隣人に怒りを向けたところで新型コロナウイルスにまつわる状況が良くなるわけではありません。