「中央銀行が紙幣を擦れる国」ほど危うい

中央銀行が紙幣を刷れるだけで歳出を極大化できるのなら、どの国もEUになど参加しない。紙幣を刷れば何でもできるのならそれは最大の国益だからだ。紙幣を刷れることに何ら価値を見いださず(=ハイパーインフレに見舞われるから)EUに参加している。

すなわち巨大債務をためてしまった国は、中央銀行が紙幣を刷れなければ財産破綻の危機に直面し、擦れればハイパーインフレの危機を迎えるにすぎない。どちらも地獄で、ある高層ビルで火事に遭ったとき、飛び降りて激落死をするか、飛び降りずに焼死するかの差だ。

どちらかというとイタリアやギリシャのように中央銀行が紙幣を刷れない国の方が被害は少ないかもしれない。彼らは国が資金繰り倒産をしそうになるとIMF、ECB、世銀等に助けを求めなければならなくなる。そして債権者たちが騒ぐから、財政赤字に敏感となり、それなりに財政規律が守られる。

いざとなれば、融資国や機関が自分も巻き添えを食うのは嫌だからそれなりに債権放棄などのコストを担ってくれる。ところが日本のように自国で紙幣を印刷して危機を先延ばしにすると、現在のように国民の間に緊張感がわかず能天気になる。これが自覚症状のない「日本病」の恐ろしさの一つなのだ。

非伝統的金融政策が招く「過激」な未来

私の主張や結論が過激、極論だと思われる方も多いだろう。しかし私自身は自分が過激だとは思っていない。この30数年で起きた財政規律の崩壊、非伝統的金融政策等の金融政策自体が過激だったのだ。だからこそ「過激」な未来を予想せざるをえないのだ。

コロナ禍最中の今、安倍首相が他国並みに財政出動をしたくてもできなくなってしまった理由でもある。私が金融マンだった頃に「禁じ手中の禁じ手」「タブー中のタブー」「ありえないこと」と習い、そう思って実務をこなしてきたことが、180度変化し常態化している。

そしてそれが新しい挑戦ではなく「財政赤字が極大化し財政ファイナンスを行ってハイパーインフレを引き起こした」過去への先祖がえり政策だからこそ、怖いのだ。

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