新卒採用の現場で生じた2つの格差
2021年卒の採用活動が新型コロナウイルスの感染拡大と「緊急事態宣言」の発出により、完全にストップしている。経団連主導の就活ルールが21年卒から廃止され、政府ルールになったものの、大学3年生の3月に企業説明会開始、6月選考開始の日程は変わらない。
就活が早期化しているとはいえ、例年の4月は会社説明会真っ最中の時期だ。新卒採用支援を手がけるモザイクワークの髙橋実COOは現状をこう語る。
「自粛要請で3月からの説明会は一部の企業のWeb説明会や面接が行われているが、対面でのリアル説明会や面接は止まっている。企業との接点を求める機会が圧倒的に少なくなり、学生・企業双方も非常に混乱している。また、大手企業はWeb面接に切り替え、採用の母集団が集まる一方で、中小企業は母集団が集められないなど二極化している。企業側の情報が少ない中でITリテラシーの高い優秀な学生が先行し、そうでない学生が取り残されるという採用格差も起こっている」
コロナ不況による採用抑制
自粛要請の中で不安定な就活を強いられている学生は大変だが、それ以上に懸念されるのが“コロナ不況”の影響を受けた企業の採用抑制だ。すでにインバウンド需要の激減によって観光・宿泊・旅行業が大打撃を受け、自粛要請で飲食、エンターテイメント業をはじめ航空・鉄道業も低迷している。自動車業界では大手自動車メーカー8社が国内生産を停止し、他の国内メーカーも工場停止や減産体制に入り、一時帰休(自宅待機)に踏み切っている状況だ。
今回のコロナ不況はリーマン・ショックを超えるとの指摘もある。これまで売り手市場(学生優位)と言われてきた新卒採用市場は買い手市場(企業優位)に転換するのか、さらには「就職氷河期」と言われる状況に陥るのだろうか。