過去3度の就職氷河期を振り返る

就職氷河期という言葉は、新卒労働市場が学生に不利になる買い手市場に移行するときに使われる。とくにバブル期の新卒者に対する求人倍率が1991年卒の2.86倍から下降してから氷河期と呼ばれ、96年卒は1.08倍にまで低下した。その後も低位で推移し、ITバブル崩壊の2000年卒は0.99と1倍を割り込んだ。その一方で大学進学率が上昇した結果、2000年の大卒就職率は55.8%まで低下した。

その後、2004年あたりから求人倍率は徐々に上昇し、売り手市場に入り、09年には2.14倍に達した。だが、リーマン・ショックによる不況で10年に1.62倍に下がり、2014年卒の1.28倍まで買い手市場が続いた。ちなみに文化放送キャリアパートナーズがこの時期に採用担当者に実施した調査(「2014年新卒採用戦線総括」2013年8月)によると、12年度卒について「買い手市場」と答えた人は27.7%。売り手市場と答えた割合はごくわずかにすぎない。14年卒まで買い手市場が18.0%と割合は高いが、売り手市場が7.1%。「買い手から売り手に移行しつつある」と答えた人が21.6%にのぼっている。

その予測はあたり、2015年卒の求人倍率が1.61倍に跳ね上がり、その後は高止まりし、2020年卒は1.83倍と売り手市場が続いていた。

採用数の下方修正が続出

売り手市場と買い手市場の目安について採用アナリストの谷出正直氏は「求人倍率1.5倍だと、採用担当者から言えば、売り手でもなく、買い手でもない普通のイメージ。1.5を下回り、1.3になると採用が容易になる買い手という印象が強く、1.5を超えると、ちょっと厳しくなってきたというイメージ」と語る。

2020年卒の1.83倍は間違いなく売り手市場であり、多くの採用担当者の実感と一致する。ではコロナ禍の影響が懸念される21年卒の求人倍率はどうか。実はリクルートワークス研究所が毎年4月下旬に発表しているが、今年は6月下旬に延期された。毎年1月下旬~3月上旬に企業の採用予定を調査しているが、今年は「新型コロナウイルス感染拡大により、3月以降に企業の採用計画が見直されている」というのが理由だ。つまり、コロナによって採用数の下方修正が行われているということだ。

実は新型コロナウイルスが問題になる前は「売り手市場が続くと言われ求人倍率も1.8を維持するか、下がっても1.7台後半とみられていた」(谷出氏)。