大手コンサルや役所で芸術系大学の採用が活発化しています。人事部は彼らに何を求めているのでしょうか。マーケターの桶谷功さんは「芸術系大学では4年間徹底的にユニークなものの見方を鍛えます。そしてそのユニークな視点で問いを立てる力が注目されているのです」といいます――。
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コンサルや役所で求められる美大・芸大卒

こんにちは、桶谷功です。

いま、「アート思考」がブームになっています。これはどういうものかというと、ものの見方を変えることで問題提起をしたり、常識にとらわれない発想をしたりすること。そして、自分なりの答えを創り出すこと。

企業もこの動きを受けて、社内でアート思考ができる人間を育てることも大事だけれども、もともとそういう志向性や能力を持つ人を即戦力として採用しようと、美大や芸大卒の人たちを採用することが増えているそうです。

たとえばコンサルティング大手のアクセンチュアは2021年卒の採用活動から「クリエイティブ/デザイン」という職種を設け、多摩美術大学や武蔵野美術大学など美大・芸大出身者を約10名採用しました。また神戸市では19年度の採用試験から「デザイン・クリエイティブ枠」という試験区分を設けたといいます。

美大・芸大の4年間で徹底的に鍛えられる力

論理的な思考が重視されるはずのコンサルティング会社や、お堅いとみられがちな役所でこの動きが広まっているのは、MBAのような論理思考が限界を迎えているからではないでしょうか。

論理思考では、問題が「これですよ」と提起されていれば、それを効率的に解決することができるけれど、今は問題そのものを発見する力が問われている。そのためには過去のケーススタディから学ぶMBAより、常識を根底からひっくり返し、新しく問いを立てるアート思考が求められているのでしょう。

じつは私も京都市立芸術大学の出身ですが(大学でビジュアルデザインを学び、卒業後は大日本印刷でパッケージデザインをしていました)、芸術系の大学では4年間を通じて徹底的に「見る」ということに関して訓練が積まれます。

たとえば「100円玉の絵を描いてください」と言われたら、100人中99人が円を描くでしょう。でも100円玉を立てて真横から見れば、ギザギザの部分がはしご状の長方形に見える。美術・芸術系の大学や学部では、こんなふうにいかに自分ならではのユニークなものの見方をするかを叩きこまれるのです。