レンガの使い道をできるだけたくさん考える

私がファシリテーターを務める新製品開発やマーケティング開発のワークショップなどで、参加者の頭をほぐすためによく出すお題があります。それは、「いまから2分間で、レンガの使い道をできるだけたくさん挙げてください」というもの。実現可能かどうかにかかわらず、とにかく数を多く出すこと。みなさんもストップウォッチを用意して、考えてみてください。

レンガ
写真=iStock.com/Bogdanhoda
※写真はイメージです

……思いついたでしょうか?

常識にとらわれている人は、せいぜい3つくらいしか出てきません。

「ブロック塀の材料にする。板を渡して棚を作る。本を挟んでブックエンドにする……。これ以上思いつきません、降参!」というふうに。

私なら、こんなふうに考えます。

まず、物質としての特徴から発想を広げていきます。たとえばレンガの「重さ」に注目してみる。レンガはそこそこ重さがありますから、漬物石にできるかもしれないし、筋トレのダンベルがわりに使えるかもしれません。

次に「平ら」であるところに着目すれば、小さい台にもなる。きれいに洗えば上に食べ物を置いてもいい。積み木のように積み上げると、いろいろなものがつくれる。

「角がある」ところに注目してみると、凶器としてなかなか威力がある。

表面が「ざらざらしている」という触感に焦点を当てれば、「大根がおろせるかな」とか、「かかとをこする軽石がわりになるかも」という発想が出てきます。

「色」に着目すれば、黒板代わりに白いチョークで何か書くこともできる。

人と同じ見方をしていると同じものしか生み出せない

もう一つのやり方は、モノそのものでなく、行為のほうから発想する方法です。

「置く」「投げる」「撫でる」「叩く」というように動詞で考えてみると、「置く」→台、椅子、テーブルにする。「投げる」→投擲の練習。「撫でる」→暗闇で触覚だけでそれが何かを当てるゲームができるかもしれない。「叩く」→金槌の代わりに釘くらいなら打てるかも。

こんなふうに、見方を変えるだけで40~50案はたちどころに出てきます。

こういう訓練を美大生はしょっちゅうやっているわけで、人と同じものの見方をしている限り、同じものしか生み出せないことをよく知っています。

マーケティングのためにデータを見るときは、見慣れた風景を初めて見るような目で見直すことが欠かせません。人と違う見方をする人材がいれば、それが自然にできる。だからこそ今、企業はアート系の人材を採用し始めているのでしょう。