世界最悪の借金、低成長、日銀による国債の爆買い
彼らが案ずる「日本病」とは①1114兆円(2020年3月末)を超える世界最悪の借金を抱え(※)、②40年間で世界最低の経済成長しかできなかった状況に陥っていること。そして③財政危機を先延ばしする目的で、日本銀行が大量の国債を買い取っている現象だ。
※国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年3月末現在)
日本の借金がいかに大きいかは名目GDP(国内総生産=経済の規模)との比で判断する。米国は104%、ドイツは62%。財政危機に陥ったギリシャやイタリアでさえ、184%と132%だ。日本は237%。断トツで世界最悪の数字となっている(いずれも2018年末)。
日本のこの数字は第2次世界大戦終戦直後の数字とほぼ同じだ。終戦後にハイパーインフレに陥った日本は、昭和21年に預金封鎖と新券発行を行った。銀行に置いてある預金しか新券に変えてもらえず旧券は流通不可になるのだから、国民は、預金せざるを得ない。こうしてタンス預金をもあぶりだされたのだ。
この時代と対GDP比で借金額の数字が同じに膨れ上がっているという事実には戦慄を覚える。
異次元緩和は「国の資金繰り倒産回避策」
コロナ禍に遭遇し、世界中が「日本病」と揶揄される日本と同じことを始めた。先述の③のように、各国政府が発動する大型財政政策の資金を調達するため政府が発行した大量の国債を中央銀行が買い取り始めたのだ。
「政府の借金を中央銀行が賄う」行為は、私が金融マンだった頃(2000年3月まで)には、世界中でタブーとされていた。しかも、皆で相談してタブーと決めたのではなく、各国が個々の判断でタブーとした。ハイパーインフレの経験からだ。それほど各国はハイパーインフレを怖がっていたといえよう。
そのタブーを日銀が先頭を切って破った。2013年の異次元緩和がそれだ。政府・日銀は「デフレ脱却のため」と言っているが、異次元緩和は「財政ファイナンス」そのものだ。これは国の資金繰り倒産回避策に他ならない。
ここまで借金がたまると通常は国債の需給バランスが崩れ長期金利が急上昇する。そうなると支払金利のみで税収が消えてしまい、政府は予算など組めない。そこで日銀が長期国債の爆買いを始め、長期金利を低く抑え込んだのだ。
「日本の財政まだ大丈夫」という無責任な主張のせいもあっただろう。危機感が湧き起こらず、だらだらと続けた結果、日銀は、現在、国債発行額の50%近くをも保有するに至ってしまった。1991年には8%弱の保有だから、すさまじい勢いの長期国債の爆買いだ。日本の財政は、こうした爆買いに支えられていることを認識してほしい。