コロナ禍で経済状況は悪化の一途だ。元米モルガン銀行日本代表の藤巻健史氏は「世界恐慌以来の不況だが、政府の財政出動は世界的に見劣りする。それは日本政府には『お金は出したいのだけれど、これ以上出せない』という深刻な事情があるからだ」という——。
世界に揶揄される「日本病」と無自覚な日本人
デービッド・スミック氏が発行人兼編集長を務める世界的権威の経済誌『The international Economy』から久しぶりに寄稿依頼があった。氏は、金融界では「知らない人はモグリ」とまで言われた金融レポートの発行元「スミック・メドレー・インターナショナル」の共同代表だった方だ。
『The international Economy』には各国中央銀行総裁や財務大臣経験者、世界の著名大学教授、エコノミスト等が執筆している。私は(僭越ながら)JPモルガン時代の実績からの実務家枠での依頼ということだろう。
聞いてきたトピックは「Is the World Still at Risk of the “Japan Disease”?」(世界はあいかわらず「日本病」のリスクにさらされているのか?)だ。
この雑誌は2017年夏号でも「日本病は世界に蔓延するか?」というタイトルの議論を組んでいる。だから、この号では「still」という言葉が入っている。1970年代の英国は「老大国」「英国病」と揶揄されていた。世界に権威ある経済誌が、今や、日本経済の現状を過去の「英国病」に匹敵すると認識しているのだ。
それなのにこの国では、政治家、マスコミ、国民に、そこまでの危機感が無い。「平和ボケ」としか言いようが無い。世界が「日本病」と揶揄するような状況の中で、日本は新型コロナウイルスによって(IMFが言うところの)「世界恐慌以来の不況」を迎えてしまった。