コロナリスクが高い職業、低い職業

緊急事態宣言後は休業や短時間営業措置を取る飲食店も増え、食料品や医薬品を販売する小売店なども、店員と客の間にビニールシートを挟み、直接飛沫等がかからないような対策を取る店が大半になりつつある。そうした状況の変化を考えれば、現在、直に人と接する機会が多いうえに休むことのできない医療関係者、介護職関係者の“感染リスク”が最も高い状態にあると言えそうだ。

投資家向けのコンテンツ配信を手掛ける米「Visual Capitalist」が業務中の複数の要因から弾き出した結果に基づき「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患するリスクが高い職業、低い職業」をランキング形式で発表している。アメリカの事例であり、実際に新型コロナに罹患した患者の人数ではなく、あくまでも「リスクが高い」とみられるランキングではあるが、緊急事態宣言が延長となる日本でも参考にはなるだろう。

調査では、(1)他の人との接触、(2)物理的近接性、(3)病気と感染症への暴露という3つの観点からリスクを算出している。そこから米国内で2万人以上いる職業のみを抽出し、ランキングにしている。

もっともリスクが高いのは歯科衛生士

これによると、最も感染リスクが高いのは歯科衛生士だ。確かに、マスクやゴーグル、手袋をしているとはいえ、患者の口腔内に直接接触しなければならない歯科関係者のリスクが高いのは言うまでもないだろう。先に挙げた3つの観点もすべて当てはまる。

同じ歯科関係では、歯科助手が3位、歯科医師は4位にランキングされている。なぜ歯科医師よりも歯科衛生士や助手のほうが、リスクが高いのか。歯医者に行ったときのことを思い出してみれば納得がいく。

患者として歯科にかかると、まず衛生士や助手によって口腔内のチェックが行われ、だいたいの症状を確認してから医師が登場するという経験がないだろうか。あるいは、治療後のケアやクリーニングなどの定期チェックであれば、医師ではなく歯科衛生士や助手だけでその回の診療が終わることも少なくない。

ランキングのトップから50位くらいまでは、医師や検査技師、看護師を含む医療関係者がほぼ独占。日本では歯医者から感染クラスタが発生したという報道はないが、院内感染による新型コロナ感染者は4月24日時点で全国およそ60の医療機関で、1086人となっている。

介護士のリスクやや低い理由

「Visual Capitalist」のランキングに戻ると、医療従事者が独占するなかで20位に客室乗務員、31位にバス運転手(学校など特別なクライアント)、39位に美容院などがランクインしている。幼稚園教諭などを含む教育関係者も100位以内に入っているが、休校になっている状況を考えれば現在のリスクは低いだろう。その他、消防士、窓口業務、俳優、ネイリストなども名を連ねる。

介護士は医療関係者に比べるとリスク評価がやや低いようだが、これはあくまでも外部の人間の往来が病院に比べて低いためであり、実際のリスクは、施設内感染を防げるかどうかで大きく変わってくる。

4月29日、千葉県は県内で新型コロナウイルスに感染し、死亡した31人のうち17人が、集団感染が起きた2カ所の高齢者介護施設の入所者だったことを明らかにした。施設内で亡くなった11人のうち、8人は延命措置を希望せず、2人は救急搬送しないという同意を得ていたことも併せて発表された。

一度ウイルスが持ち込まれれば、高齢者で抵抗力の弱い入所者はもちろん、直接ケアを行う介護士の感染リスクは格段に高まる。施設内での感染症の蔓延を防ぐには「病原体を持ち込まない・持ち出さない・広げない」の3原則が必要とされるが、介護職の場合は中でも「持ち込まない」ことが重視されよう。