夜間に子どもを預かる認可保育園は都内に1カ所だけ
深夜まで働いている人はたくさんいる。ところが、そんな親たちを支える保育園は少ない。
東京都の場合、昼間の認可保育園は約2811園あり、認証保育所も610園ある。ところが、夜間に子どもを預かるのは、認可はエイビイシイ保育園だけ、認証も1カ所しかない。そのため、深夜まで働く親たちのほとんどがベビーホテル(認可外保育施設)を利用している。
3月23日、東京都が「週末の外出自粛要請」を出す直前に、私はエイビイシイ保育園に片野さんを訪ねていた。夜間保育の取材のためだ。
昨年度、小池百合子都知事は夜間保育不足の対策として、6300万円の予算をつけ、7つの認証保育所での夜間保育開始を目指すと発表した。だが、この1年で夜間保育に取り組んだのは1園のみだった。
一方の片野さんは1983年に新宿の雑居ビルで24時間保育のベビーホテルを始め、2001年に東京都初の夜間認可保育園となった。
「夜、子どもを預けて働くべきではない」という根強い先入観
ベビーホテルが認可を取得するのは簡単ではない。どんないきさつで実現できたのか。また夜間保育が増えない原因をどう考えているのか。長年現場に関わっている片野さんに話を聞きたいと思った。
「夜間保育園が増えない理由ですか? 役所にも保育関係者にも、夜、子どもを預けて働くことは子どもによくないという先入観が今も残っている。だからだと私は思います」
エイビイシイ保育園の園舎は半地下と地上3階、タイル張りのこぢんまりとした建物だ。隣は一戸建て住宅。園庭はない。近所に十分な広さの公園があれば園庭が確保できなくても認可保育園の条件を満たしているのだと、片野さんが説明してくれた。お天気の日にはこの地区でいちばん広い新宿戸山公園にも出かけるという。
子どもたちは全員、昼と夜の2食を保育園で食べる。夜、家で親とごはんを食べないなんて、かわいそう。そんな意見を隠さない保育関係者もいる。
「私はそうではないと思います。保育園でしっかり夕食まで食べて、お迎えの後はゆっくり家で過ごすことができたら、親もゆとりを持って子どもと関わることができますよ」