「距離を取る」メンタルスキル

先述のKさんは学生時代、自分のミスで大切な試合に負けた出来事を思い出し、そのときに感じた後悔をネガティブな感情の10点としました。そして、その点数を基準に、いま抱えている感情を採点していきました。

Kさんのように、採点というアクションを通してネガティブな感情と少し距離を置きながら、自分の心の動きを理解することで、そこから発生する感情を上手にコントロールできるようになります。

たとえばいま、思い通りにならない毎日の中で、あなたが8点、9点をつけるような強い不快の感情を抱いてしまっているとしたら、原因となっている人や事柄から1時間だけでもいいので離れてみましょう。心理的・物理的な「距離」を取るのです。

そして、緑の多い場所に出かけましょう。木々を見ながら歩くだけで心が落ち着きます。これは脳内でセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されるからです。

ネガティブ感情を分離すれば、「スキーマ」は武器になる

心がすこし落ち着いたら、ふたたび「感情の数値化」を行ってみてください。抱えていたネガティブな感情は3、4点くらいにまで下がっているはずです。

「感情の数値化」には、過去のよりネガティブな感情を思い出し、「あの最悪のときを乗り越えてきたんだから……」と考えることで、冷静さを取り戻す効果があります。また、定期的に自分の感情を数値化することで、ネガティブな感情を手放すきっかけをつかむこともできるのです。

女性の手は心臓の形で閉じられた赤い南京錠を握る
写真=iStock.com/Fotoeventis
※写真はイメージです

前述のKさんは「感情の数値化」を通じて、自分の弱みが「負けを認められない完璧主義」にあると気づきました。

それからのKさんは、ストレスがたまると、「あ、また過剰な完璧主義が顔を出したな」と察知して、「感情の数値化」を行い、感情を数字で可視化する習慣がつきました。

そのことによって、「でも、これってそこまで完璧さを求められている?」などと自問自答することで、冷静さを取り戻し、この「完璧主義のスキーマ」を他の方法でもっと活かせないかと論理的に考えるようになりました。そうすることで、日々の生活も、仕事も人生全般も、飛躍的にうまくいくようになったのです。