丸1年は売り上げがなくても耐えられる
営業自粛をすれば、売り上げは立たず、企業に入ってくるお金の流れは止まります。一方で、企業には固定費があり、営業の有無にかかわらず出ていくお金は一定額発生し続けます。従って、どれだけ現金および預金を持っているかが、営業自粛に耐えられるかの企業体力を示します。それでは、どれだけの期間、オリエンタルランドは営業自粛に耐えられるのか予測してみます。
オリエンタルランドにおける直近第3四半期(2019年12月期)の現金および預金残高は約3290億円。これを前期通年12カ月間の費用と比較してみます。売上原価と販売費および一般管理費の合計から、非現金支出(出金を伴わない費用)である減価償却費を除いた金額は約3580億円です。つまり、短期的な借入返済がないとすれば、11カ月分の費用をまかなえる計算です。加えて、売却可能な有価証券も約380億円あり、それを考慮すると、手元現預金3670億円>現金支出3580億円となり、丸々1年間は売り上げが立たなくても営業費用の支払いには耐えられることになります。
「流動比率」と「固定比率」ともに健全な数値
実際には営業を止めれば変動費は発生しません。現預金の支出を伴う固定費である人件費については、前期通年で約900億円かかっていますが、手元保有現預金残高で十分支払い可能なコスト水準です。
その他、企業経営の安全性を評価する指標として、流動比率、固定比率があります。
流動比率(流動資産÷流動負債)とは、1年以内の支払債務と現金化可能資産の比較ですが、100%以上あれば短期的な支払いには困らないことになります。オリエンタルランドの直近第3四半期における流動比率は303%です。オリエンタルランドは短期的な支払い予定額の約3倍の流動資産を持っているということになります。
また、固定比率(固定資産÷自己資本比率)は、どれだけの長期投資を、借り入れではなく返済義務のない自己資本で行えているか示します。100%を下回っていれば安全な水準と言われますが、オリエンタルランドの直近第3四半期における固定比率は約78%。長期投資の全てを自己資本で行っていると言える水準で、借入返済で窮することはありません。従って、安全性分析上も、オリエンタルランドが資金ショートによる倒産をする可能性は低いと言えます。