スマホ市場はアップルとグーグルが席巻

ただし、マイクロソフトの成長が再加速したのはここ数年の出来事。それまでは、完全に停滞期を迎えていたのです。パソコンの基本ソフト「Windows」で他を寄せ付けないほどの圧倒的なシェアを占め、長らくIT業界の盟主として存在していましたが、ITの「モバイル化」と「クラウド化」という技術革新の波に乗り遅れ、トップの座をGAFA勢に奪われてしまいます。

じつは、マイクロソフトは2000年代初頭には「ウィンドウズモバイル」というモバイル用のOSを開発していました。ところが、「ウィンドウズモバイル」は、「PDA」と呼ばれる携帯情報端末へは搭載が進んだものの、スマートフォンへの対応のほうは遅れてしまっていたのです。2011年、まだ携帯電話市場で首位の座にあったフィンランドの「ノキア」と手を組み、マイクロソフトは「ウィンドウズモバイル」を搭載したスマートフォン「ウィンドウズフォン」の販売を開始しますが、まったく奮いませんでした。なぜなら、時すでに遅し、スマートフォン市場はアップルの「iOS」とグーグルの「アンドロイド」が2大OS(基本ソフト)となり、市場をすでに席巻してしまっていたからです。

その後、当時の最高経営責任者(CEO)だったスティーブ・バルマー氏は、2013年にノキアを約7000億円で買収し、引き続き、真っ向からアップルの「iOS」とグーグルの「アンドロイド」に戦いを挑みます。しかし、戦局を変えることはできず、失敗に終わったノキア買収の責任をとって、辞任することになったのです。

クラウド事業はビジネスモデルと相性が悪かった

クラウド事業においても、マイクロソフトはアマゾンに先行されてしまいます。アマゾンがAWSをスタートさせたのは、2006年。当時、ストレージやデータベース、ネットワーキング、セキュリティなど、クラウドをベースとしたサービスへのニーズが高まっていたところ、他に競合するサービスもなかったためアマゾンが瞬く間に市場を占有しました。

一方、マイクロソフトが「ウィンドウズ・アジュール」というクラウドサービスを市場に投入したのは、アマゾンに4年ほど遅れた2010年です。マイクロソフトはサービスの提供を始めたものの、当初は積極的にシェアを取ろうという姿勢があまりみられませんでした。なぜかというと、当時のマイクロソフトの主力事業がクラウドサービスと相容れないビジネスモデルだったからです。