ヒヨコを買った40代女性の言い分
では、なぜそういった“不安定”なときにアメリカ人はヒヨコを買うのでしょうか。今回のコロナ禍でのヒヨコ需要増の背景には、食料源確保と、社会的孤立を癒やすため、という2つの理由が主にあるようです。
ニューヨーク・タイムズの同じ記事では、ヒヨコを購入したテキサス州に住む40代女性ミュージシャンの話を紹介しています。彼女はもともとヒヨコを買うつもりなどなかったそうですが、コロナの影響で仕事がキャンセルされ、「急に時間ができた」といいます。
その一方で、アメリカでは急激に卵の需要が高まりました。米農務省によると、同記事が出た前の週、米国では卵の価格が50%上昇した所もあり、卵の供給が追いつかない店も出ているそうです。
「一人あたりの年間卵消費量(2017年)」によると、日本は19.64kgであるのに対し、米国は15.57kgと日本の80%程度の消費量に留まっています。日本人ほど卵が好きではない米国人が、パニック下で「卵」という栄養豊富な食料源の確保に急ぐのは食料品買い占めの延長線にあるとみられます。将来の先行き不安から、卵という食料源の確保のために米国人はヒヨコを買うのも理由の一つではないでしょうか。
ヒヨコは希望に満ちている……
そんな中、前述の女性は「みんながヒヨコの爆買いを始める前に……」と、雌を4羽、雄を1羽、購入することにしました。「どうせやることがないので、何か楽しい暇つぶしを探していたところだった」と振り返ります。
女性は鶏を購入した理由の一つにフードセキュリティー(食料安全保障、食料の確保)も挙げます。仕事がいつ正常に戻るかわからないとし「安定した食糧源を確保することは、今はいい考えだと思っている」と話します。
ただ、鶏が卵を産み出すのは孵化後5~6カ月と、結構先の話です。そもそもニューヨーク・タイムズによれば、卵の供給量が減っている、というわけではないそうです。
ニューヨークタイムズはこう続けます。
「ヒヨコたちは食糧確保以外の観点でも、彼女に『安心』を提供しています。『ヒヨコが育つのを見ていると、希望が満ちてくるのです』と彼女は話します」