残念すぎる、偏りすぎた韓国経済
その時限爆弾となっているのが、半導体産業です。前述したように、韓国経済の構造は、貿易で大きく稼ぎ、それ以外の収支がおおむねマイナスという特徴があります。そのため、足もとの貿易モデルは一見強固に見えますが、外貨は思ったほど貯まっていないのです。フィスコ世界金融経済シナリオ分析会議のデータで、韓国と日本のドルのストック・経常収支を比較してみると、18年度におけるドルのストックは韓国の官民で約26兆7000億円、日本の官民で261兆円の試算となり、日本のわずか約10分の1のストックにとどまります(※対外資産のうち60%をドルと試算)。
さらに、経常収支は韓国が約6兆5000億円なのに対し、日本は約19兆8000億円(19年)。日本と3倍の差があります。また、韓国の輸出のうち「機械と電子部品」「輸送機」は全体の6割を占めており、輸送機(自動車)が破滅的になれば、経常収支は損益トントン、機械と電子部品(半導体)が破滅的になれば、20兆円近い大幅な経常赤字に転落すると予想されています。
つまり、韓国経済は“稼ぐ部門”が集中しすぎており、バランスが偏っているのです。これが2つ目の理由です。「偏ってる」といえば財閥問題もその一つに挙げられます。韓国4財閥(サムスン、ヒュンダイ、LG、SK)は韓国のGDPの60%を占めています。この財閥経済を解体することは難しく、政治腐敗や経済面にも大きな影を落としているのは言うまでもないでしょう。
日韓通貨スワップ、日本側にメリットはあるのか
3つ目は、外貨準備高が不安定だからです。
韓国銀行によると、1997年のアジア通貨危機の際、韓国の外貨準備高は39億4000万ドルまで減少しました。その際、資金流出が止まらず国際通貨基金(IMF)に緊急支援を要請した経緯があります。その後、08年3月には2642億ドルまで回復したものの、リーマンショック発生後の08年末には2012億ドルまで再び減少。直近の20年2月末時点では4091億ドルとなり、韓国内では「97年のような通貨危機は起こりにくい」との認識が広まっています。
そんな中、韓国の丁世均(チョン・セギュン)首相は3月27日、日本との通貨スワップ協定について、「外貨市場の安定に大きく寄与するため、(協定は)結ばれるのが正しいと思う」と述べています。
では、日韓通貨スワップは日本にどの程度メリットがあるのでしょうか?
自国の通貨が暴落して「通貨危機」の状態になると、自国通貨の価値が下がり、通貨の価値を維持するために、外貨を売って自国の通貨を買うことがあります。結果、保有する外貨はさらに減ることになります。当然ながら、外国と取引する際の決済用の外貨も減ります。この循環からデフォルトにならないために、「通貨スワップ協定」を結ぶことが検討されるのです。
スワップ協定は、簡単に言えば外国から外貨を補塡・融通してもらうこと。つまり、韓国はこのコロナ不況下で、「資金流出に備えて日本とも協定を締結すべき」「為替の安全弁として意味がある」と日本との通貨スワップの必要性を述べているのです。