大河ドラマ『勝海舟』が、子母澤寛(しもざわかん)の長編を原作として放送されたのは、1974年、私が小学校6年生の時だったから、これは観ていたし、直木賞作家・山田克郎が子供向けに書いた『勝海舟』もその時読んだのだが、子母澤の、新潮文庫全6冊の原作は、長いこともあって最近まで敬遠していた。が、いざ読み始めてみて、ほとんど、『レ・ミゼラブル』に匹敵すると言ってもいい名作だと思い、遂に最後の第6巻はもったいなくてまだ読めずにいる。

勝海舟といえば、貧乏旗本・勝小吉の嫡男(ちゃくなん)で、小吉は『夢酔独言』という、日本初ともいうべき言文一致体による自伝を残した人でもある。海舟は麟太郎、蘭学を学び、剣客でもあり、その才能を見出されて、咸臨丸(かんりんまる)を指揮して、日本人による初の太平洋航海、渡米を実現した人でもある。ただし、子母澤の当時は日本人だけで行われたとされていたのが、のち、土居良三の『咸臨丸海を渡る』(中公文庫)で、同乗の米国軍人にかなり助けられていたことが明らかにされた。