井伊掃部頭直弼(かもんのかみなおすけ)は、幕末、黒船来航以後の、尊皇攘夷思想の擡頭(たいとう)の中で、志士たちを次々と処刑する安政の大獄を起こし、ついに水戸浪士たちによって桜田門外で暗殺された人である。舟橋聖一はその生涯を小説『花の生涯』に描き、これがNHK大河ドラマ第一作の原作となった。

明治維新以後、井伊は幕府方の人間であるのみならず、長州の吉田松陰を処刑した当人でもあるから、あまり井伊をよく言う人はなかったが、しかし考えるならば、攘夷というのは無理なことである、というのは、当時既に賢明な人には分かっていたことで、直弼の処断は正しかったというほかないのである。