新メニューは訴求が十分でなかった
新メニューが功を奏さなかったのは、訴求が十分でないためだ。既存顧客に新メニューの存在を知ってもらうのは、そう難しくない。店内で訴求すればいいからだ。だが、新規顧客に知ってもらうには、テレビCMを打つなど大々的な販促が必要になる。
大々的な販促を打つには当然大きなコストがかかるが、コストに見合った効果が得られるとは限らない。十分な効果を得るには、斬新なアイデアが必要になってくる。
たとえば牛丼チェーンの「吉野家」は19年3月、28年ぶりの新サイズ「小盛」を発売して話題を集めた。小盛は肉と米が「並盛」の約4分の3の量の商品だ。「特盛」よりも大きいサイズの「超特盛」と同時に発売し、発売1カ月で「超特盛」は100万食、「小盛」は60万食というヒットになった。発売月である19年3月の既存店売上高は前年同月比8.1%増と大きく伸びた。
吉野家は「超特盛」と同時発売で「小盛」もヒット
「小盛」のヒットの要因は、「超特盛」と一緒に打ち出した点にある。吉野家がこの2つの発売を発表した時、ほとんどのメディアは「超特盛」のほうを大々的に取り上げた。「超特盛」だけが見出しになったケースも多かった。これは、「小さい・少ない」よりも「大きい・多い」のほうがインパクトを与えやすいためだろう。飲食店で「デカ盛り」がはやったのと同様の理由だ。
そして「超特盛」が大々的に取り上げられたことで、「小盛」も同時に宣伝することができた。一見、陰に隠れてしまったように思えるが、もし「小盛」だけであれば、ほとんど話題にならなかっただろう。「超特盛」と一緒に打ち出すというアイデアで注目を集めることに成功し、1カ月で60万食をも販売できたわけだ。
これと比べると、リンガーハットの「薄皮ぎょうざ定食」や新たな定食メニューの打ち出しは、世間に十分なインパクトを与えたとはいえないだろう。リンガーハットが不振から脱却するには、新メニューを打ち出すだけでなく、そこに斬新かつインパクトのあるしかけを用意する必要があるだろう。