ランチメニュー刷新で集客を試みた
こうした状況を受け、19年8月にランチメニューを刷新し、集客を試みている。370円(税別、以下同)の「薄皮ぎょうざ定食」を新設したほか、量が少ない「小さいちゃんぽん」「小さい皿うどん」と「餃子」がセットになった定食を新たに追加したり、一部メニューを10円値下げしたりしている。
新設された「薄皮ぎょうざ定食」は、餃子7個とご飯、スープ、漬物がセットになった商品で370円。リンガーハットの中では、圧倒的に安い。また、量が少ないちゃんぽんや皿うどんの定食はいずれも500円台と手ごろな価格だ。値上げで低価格を求める客が離れていたため、手ごろな価格のメニューを充実させて集客を図ったというわけだ。
だが、メニュー刷新後の業績は思わしくない。マイナス傾向が続いていた客数は、前年を上回る月が目立ってきたものの客単価が大きく下がってしまい、既存店売上高はメニューを刷新した19年8月から20年2月までの7カ月間すべてで前年割れとなっている。メニュー刷新はうまくいっていないと言っていいだろう。
目玉の「薄皮ぎょうざ定食」が不発
新メニューの目玉になっていたのは「薄皮ぎょうざ定食」だった。問題はここにある。370円と、確かに安いことは安い。ただ、リンガーハットの売りはちゃんぽんと皿うどんであって、餃子ではない。「リンガーハットの餃子がおいしい」というイメージはあまり強くない。そんな位置づけの餃子をちょっとした低価格で販売したとしても、大きなインパクトは与えづらい。また、量が少ないため、一般的な男性客にとってランチとしては物足りないだろう。
ほかの外食チェーンと比較しても、競争力が高いとはいえない。中華料理チェーンの「日高屋」では餃子(6個・210円)とご飯(普通サイズ・164円)を提供しており、合計で374円。「餃子の王将」も餃子(6個・240円または220円/地域によって異なる)とご飯(中サイズ・170円または160円/同)の合計で410円または380円だ。
リンガーハットはメニューの刷新後、客数は増えても客単価が減少し、結果として既存店売上高が減ってしまった。つまり、期待したほど「薄皮ぎょうざ定食」で新規顧客を開拓できなかった一方で、既存顧客がこのメニューに乗り換えてしまい客単価が下がったのだろう。小さいちゃんぽんや皿うどんの定食でも、同様のことが起きていると考えられる。