【胃がん】「再発したら終わり」に一筋の希望が見えた

国をあげての検診事業で早期発見・早期治療が浸透している胃がん。そのため治りやすいがんとの誤解があるが、実は「切除不能・再発進行胃がんに効く抗がん剤はない。再発したら終わり」(消化器外科医)が医療者の常識だった。

04年版の「胃癌治療ガイドライン」に「特定のレジメン(抗がん剤の種類、治療計画などを指す)を推奨することはできない」との記載があったほど。つまり、これまでは標準薬物療法そのものがなかったのである。しかし、この数年で事情は様変わりした。

1つは経口剤のテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(製品名TS‐1)とシスプラチンの併用療法が切除不能・再発進行胃がんの標準治療となったこと。

「効果が確認された臨床試験で平均生存期間は13カ月。何もしなければ、余命は約半年だからまずまずの結果。これからの課題はどうやって生存期間を延ばすか」(同)。

そこで期待されるのが分子標的薬。11年春には乳がんの治療薬であるトラスツズマブ(前回の記事参照)の胃がんへの適応拡大が見込まれている。HER2陽性患者では、標準治療との併用で「標準治療の約1年にプラス3カ月程度の延命が期待できる」(同)。

分子標的薬を使う際に土台となる抗がん剤も10年、欧米で標準的に使われているカペシタビンが国内で使えるようになった。これは、「公知申請」という制度のおかげだ。公知申請とは、すでに海外で承認され、その有効性と安全性が知られている薬について、国内では追加の臨床試験の一部もしくは全部を行わずに承認申請が可能になるという制度のことだ。

「徐々に手段は増えている。再発しても、以前のようにすぐ諦める必要はない」(同)

※すべて雑誌掲載当時