【肺がん】薬害訴訟のイレッサも特定の患者には効果が

一口に肺がんといっても、様々な種類がある。一人ひとりのがんに合わせた「テイラード医療」が待望されるがんの代表格といっていい。

図4.一口に肺がんといってもできる場所で悪性度や進行スピードが違う

図4.一口に肺がんといってもできる場所で悪性度や進行スピードが違う

09年5月に承認されたペメトレキセド(製品名アリムタ)を使う併用療法では、「腺がん」(図4参照)と「大細胞がん」では既存の治療法より生存期間の延長が認められたが、逆に「扁平上皮がん」に対する効果は既存治療が勝っていることがわかった。「肺がんのタイプの違いで治療法を使い分けることができるようになった」(腫瘍内科医)。

また、遺伝子異常(変異)の有無で分子標的薬を使い分ける可能性も出てきている。その薬とはゲフィチニブ(製品名イレッサ・写真D)だ。

ゲフィチニブは、副作用による死亡をめぐって国と製薬企業を相手取った6年越しの薬害訴訟が結審したばかりだが(判決は11年)、この間も薬そのものの白黒をつける臨床試験が行われてきた。

日本を含めたアジアで行われた臨床試験では、EGFR遺伝子に変異がある患者はゲフィチニブ単剤で、標準治療を受けたグループの治療効果を大きく上回ることが報告された。

10年6月には東北大学など50施設が参加した試験でも、ゲフィチニブ単独で、EGFR遺伝子に変異を持つ患者のがんが進行せずに生存する期間を標準治療の2倍にあたる約2年半に延長することが報告されている。

これらの結果を受け、この10月に発表された日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン10年版では、ステージIVと診断された小細胞がん以外の肺がん患者でEGFR遺伝子に変異がある場合は、化学療法と並び初回からゲフィチニブが推奨されている。今後「EGFRに変異があり、肺炎など副作用のリスクが低い場合は、ゲフィチニブを第1選択にする」(同)という施設が増えそうだ。