政治介入が許されない検察庁人事に異例の事態

安倍首相の私物化の例を挙げればきりがない。憲法9条を骨抜きにするため内閣法制局長官の首をげ替えた。アベノミクスのため意のままに動く人物を日銀総裁に据えた。NHK会長に安倍の傀儡かいらいをごり押しなど、枚挙にいとまがない。

安倍にべったりだった元TBSワシントン支局長・山口敬之の「伊藤詩織準強姦事件」をストップさせた中村格刑事部長(当時)は、とんとん拍子に出世し、次期警察庁長官有力だといわれている。

安倍は“聖域”とされてきた検察庁にまで手を突っ込んだ。1月31日、政府は2月7日に63歳の定年を迎える黒川弘務東京高検検事長を、8月7日まで勤務延長とする閣議決定を行ったのである。

検察庁法では、トップの検事総長の定年を65歳、ナンバー2の東京高検検事長以下の定年を63歳とはっきり定めている。

検察庁というのは、政官界の不正にメスを入れるために、政治介入を許さないとされてきた。だが、それを無視して政府は人事権を行使したのである。こんなことが許されていいはずがない。権力の暴走である。

この裏には、検察が現職議員を収賄容疑で逮捕したIR疑獄事件があるといわれている。この捜査が進むと、安倍官邸が推し進めてきたカジノ構想が破綻する恐れがあるから、それを潰そうというのである。

「桜を見る会」前夜祭の“接待”は、間違いなく脱法行為だ

安倍が任命した閣僚たちが次々に辞任した政治資金規正法違反などの捜査も続いているが、それにも圧力をかけようとしているのではないかともいわれている。

疑惑がささやかれている河井案里参院議員の選挙中に、安倍の指示で、自民党から1億5000万円もの多額な選挙資金が案里側に提供されていたことも明らかになった。

昨年秋から噴出した安倍自身の「桜を見る会」疑惑は、「一国の政治指導者の言葉の信が問われる、深刻な事態」(朝日新聞2月23日付「社説」)に立ち至った。

税金を使っての地元有権者“接待”など許されるはずはないが、国会で野党から追及された安倍は、口から出まかせといってもいいほど、ウソをつき続けたのである。

前夜祭の支払いは、参加者個人個人がホテルニューオータニ側に支払ったという、あり得ない答弁は、長年、安倍のパーティーを受けてきたANAインターコンチネンタルホテルが、「代金は主催者からまとめて受け取る」と野党議員に答えたため破綻してしまった。