日本政府にとってこの統一はおもしろくないだろう。なにせ、歴史的に日本に不信感を抱く理由には事欠かない統一朝鮮が、日本の手強いライバルとなるのだから。何より、統一朝鮮は、韓国にとっての最大の貿易国である中国の勢力圏に入ってしまう。そうなれば、中国政府と日本政府の対立は深刻化し、日本の軍事力強化に拍車がかかる可能性もある。

北朝鮮の鉱物資源を狙うアメリカ

また無視できないのは、北朝鮮に対する米国の狙いが、現在の平壌をより米国寄りの政府にすり替え、北朝鮮の有望な鉱業界に米国企業の参入を図ることだという可能性だ。

あまり知られていないいくつかの調査によると、北朝鮮の領土にはまだ開発されていない大量の鉱物が存在し、総価値は10兆ドル以上にのぼるともいわれている。北朝鮮に石炭が豊富にあることはよく知られているが、加えてとくに金、マグネサイト、銅、モリブデン、銀、タングステン、バナジウム、チタン、亜鉛、レアアース、鉄、黒鉛といった鉱物が眠っているらしい。

北朝鮮にはレアアースだけでも、世界の総埋蔵量の約3分の2、中国の6倍はあるだろうと推定されている。マグネサイトは世界で第2位、そして下層土には地球上で6番目に多いタングステンが存在すると見込まれる。米国の戦略から、これほどおいしい宝が見落とされているとはとても考えられない。

中国が「自由貿易の世界的リーダー」に?

一連のグローバル化のプロセスは、とくに英国と米国のアングロサクソン系によってつくられ、推進されてきた。しかしいま、それは大きな変革期にあり、結末がどうなるかはまだわからない。そして公式には共産主義国である中国が、資本主義の擁護者になろうとしている。

アジアのこの国は米国に次ぐ世界第2位の経済力を誇るが、購買力平価説〔訳注:2国間の為替レートは、各国通貨の同一財の購買力の比較で決まるという為替相場の決定理論〕で見ると世界第1位で、いまやグローバリゼーションおよび自由貿易の世界的リーダーとなることを目指している――。

2017年1月18日のダボス会議でそう述べた習近平国家主席は、さらに貿易と投資の自由化に尽力すると強調した。同時にこの中国のリーダーはあらゆる保護主義に断固反対する姿勢を見せた。これは明らかに、ホワイトハウスに着任後のドナルド・トランプがことあるごとに公言してきた、米国経済に損害を与えている中国製品に対する関税引き上げの意思に対抗するものだ。

習近平は「貿易戦争には勝者はいない」とまで言い放った。このように、明らかに世界経済の支配を目指して歩んでいる中国だが、掲げた目的を達成するために大きく前進する主要な原動力としてイノベーションに賭け、自由でオープンな貿易協定のネットワークを構築しようとしている。